「そん時からなんだよなぁ、医者じゃなくて、なんでか看護師になりたかったのはさぁ。ま、母親がそうだったからなのかもしれねぇけど」
「そういうことだったのか」
「ああ、まぁな。だから、親父のことを知ってると言えば知ってるんだけど、優しかった親父の印象しかないからなぁ。だから、望の親父さんを見て、もし俺の親父が生きていれば、あんな感じだったのかなぁ? って思ってよ」
そこまで言うと、和也は何かを思い出したのか、手を叩くと、
「ア! 思い出した! 俺が看護師になりたかった理由! そうだ! そうそうそう! 俺の親父もさぁ、医者だったんだけど、早くに親父は死んじまったじゃねぇか。だからさぁ、母親一人では流石に医学部へ行ける金はなかったから、看護師にしたんだったなぁ。それなら、学費くらいは払えると思ったからさぁ」
「なるほどなぁ。それで、お前の頭の回転の良さが分かったような気がするぜ」
「ま、今ならきっと、医者になろうと思えばなれると思うけどなぁ。今まで一人で暮らしていたから、毎月貯金してきてるからな」
「でも、もう、和也は医者になる気はないんだろ?」
「まぁな。今は今でこの職業に満足してるしな」
「そっかぁ」
「でも、もし俺がこの病院に来なかったら、今の職業には満足してなかったかもしれねぇなぁ。それに、望や雄介、裕実にも会えなかったしよ」
「確かに、そうだな」
和也と望は一旦、自分たちの部屋に戻り、ソファへと腰を下ろす。
「それに、俺がこの病院を選んだのは、前にも言ったことがあるけどさぁ。医者と看護師のコンビ制度ってのが珍しくてな。興味で選んだってのもある」
「そっか……」
和也はまた何かを思い出したのか、再び手を叩くと、
「確か、前に望とこんな話をしたよなぁ そん時、望は俺と一緒で『コンビ制度に惹かれて、この病院に来た』って言ってたけど、別に望の場合には、そういう訳じゃなかったんだよな?」
「あ、ああ、まぁ……。今だから言うけど……あん時は親父もいなかったから、院長の息子だから、この病院にいるとは言えなかったっていうか……ま、俺が院長の息子だってことを隠しておきたかったから、そう言ってたんだよ」