「やっぱり、そういうの嫌だと思うからよ。俺は動きたいんだよ。それに、今もまだ俺の親父が院長だってこと知ってる人、少ないと思うぜ」
「裕実とか新城とかだけか?」
「そういうことだ」
ちょうど、話が切れたところで望は体を伸ばしながら時計を見ると、
「もう、こんな時間かぁ」
「そろそろ、準備しなきゃならないな」
和也もソファから立ち上がり、笑顔で望の方へ顔を向ける。
「大丈夫そうか?」
「あ、ああ……大丈夫だよ。まったく、親父の言う通りだな」
「……へ? 何が?」
「イタズラ気な顔で聞いてくるってことは分かってるんだろ?」
「まぁな……。でも、それは、望が本当に平気ならばなんだけどな」
「本当に大丈夫だよ。雄介のことだろ?」
「ああ。本当に大丈夫そうなら良かったよ」
望が安心したような表情を見せると、和也も安心したのか、立ち上がって準備を始める。
その時、望たちの部屋のドアをノックする音が部屋内に響き渡る。
和也と望はお互いに視線を合わせる。
今、この時間に二人がいる部屋に訪れてくる客はまずいない。
多分、裕二だろう。もう望たちは手術室に入って準備しなきゃならないので、さっき話していた美里の手術を交代するのかどうかを確認しに来たのかもしれない。
仕方なく望はドアに向かい、ドアを開けると、そこに立っていたのは予想外の人物、息を切らした雄介だった。
「あー、良かったわぁ。望がここにおって……。とりあえずなぁ、俺の姉貴が今日手術やんか、せやから、望とは恋人同士やけど……挨拶しとかなアカンって思うてな、探しておったんやって……。ほら、ここにおると電話の方も電源入ってないやろうし、出ないと思うとったしな」
「あ、え? ああ……おう」
いきなり思ってもいなかった人物の登場に、望は頭が働いていなかったのだろう。簡単に答えていたが、ふと雄介のことを見上げ、
「……って、お前、大丈夫だったのか?」
流石の望も焦っていた事もあってか、主語が抜けてしまい、いきなりそんなことを言われた雄介は首をかしげる。
望の後ろから顔を出した和也が、望の言葉に付け足すように、