「まだ、アイツは雄介のこと忘れてなかったのかよー」
「みたいだな」
「望の時以上に雄介には本気なんじゃねぇの?」
「……へ? そうなのかなぁ?」
「もしかしたら? かもしれねぇけどな……ま、俺はそう感じているだけだしさ」
和也はソファへと寄りかかると、何かを思い出したのか、
「なぁ、まさか、今日、歩夢は雄介んとこに行こうとしてないだろうな?」
突然、和也からの突拍子もない問いに、望は一瞬、意味が分からなかったようだが、それを理解した直後、顔色が変わる。
「あ、歩夢なら、そうするかもしれねぇな。多分、親父かなんかから聞き出せば、歩夢は当然、俺が家にいない日は知っている訳だし、これ以上ないチャンスは今日だけかもしれねぇしな」
「……だろ?」
それに気付いた望は仕事どころではなくなったらしい。何か一生懸命考えているのか、瞳を宙へ漂わせている。
「でも、お前が仕事だっていうこと、知らないかもしれねぇんだろ?」
「まぁ、そうなんだけど……」
「アイツがもし、本気の本気で雄介のことが好きであれば、確かに望の仕事までチェックしてくるかもしれねぇが、もしそうじゃなかった場合、チェックしてない可能性もある訳だからさぁ、大丈夫かもしれねぇぞ」
「ま、確かにそうかもな」
「だから、心配しなくても大丈夫だって! それに、あの雄介だぞ! 望のことラブな雄介のことだぞー。絶対に歩夢のことはねのけるだろ?」
「んー……前のことがあるからなぁ。雄介の奴、上手く歩夢のことはねのけてくれるかが心配なんだよなぁ。あの歩夢がすっげぇ押してきそうだしよ。だって、和也だって、歩夢には勝てねぇだろ?」
「どうなんだろ? 俺、アイツとあんまり関わったことねぇからなぁ。でも、俺は誰でも勝てる自信あるからなぁ? それで、裕実のことを守る自信あるしな」
「何言ってんだよ……お前が勝てねぇ奴、一人いるだろ?」
「新城だー!」
「分かってるんだ……」
和也が叫ぶように答えると、同時に小さな声で突っ込む望。