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ー決心ー46

 ただただ近くにある海の波音が聞こえるだけで、他には音がなく静かな場所であった。


 これだけ静かな場所に歩夢は本当にいるのだろうかと、心配になるくらいである。


 しかし、あくまで三人が推理した場所であり、歩夢がここにいると確定したわけではない。


「ホンマ、こないな静かな場所に歩夢は居るんやろうか?」

「ま、居るとは限ってはねぇし、少し探してみて居なかったら、一旦病院に戻って考えるしかないな」

「せやな。 しかし、この辺、街灯とか一個もあらへんで、懐中電灯持って来てへんし」


 この辺りは本当に夜は誰も利用しない場所なのだろう。いや、むしろ廃倉庫街で、今は使われていないため何も手入れされておらず、街灯さえ点いていないのであろう。


 唯一の明かりは月明かりと遠くにあるビルの明かりだけで、どうにか目が暗闇に慣れてくれば足元が見えるくらいの暗さである。


 足元は砂利道で、歩くたびに音が鳴る。


 こんな人気のない場所で砂利の音がすれば、犯人がもしこの倉庫街にいた場合、気づかれる可能性は高い。


「ほんで、どういう風に探す?」

「そうだなぁ?  もしものことを考えて、三人共一緒に行動した方がいいよな?」

「確かにそうだよな。それはいいとして、方向的にはどうするんだ?」


 望たちがいる場所からは四方に倉庫が広がっており、どこから探せばいいのかさえ分からない状態である。


「そこは勘で行くしかねぇだろー」


 そう言って先に歩き出したのは和也だ。望たちは和也の後を歩き始める。


 いつまで歩いても人の気配はなく、廃倉庫だけあって電気も通っていないらしい。どこにも明かりが点いている気配はなく、望たちは諦めかけていた。


「やっぱ、ここはハズレだったかなぁ?」

「でもさ、もし、このどこかに歩夢が居て、犯人も居た場合、それから、どうするつもりだったんだ?」

「そりゃ、助けに入るだろー」

「じゃなくてー、テレビとか見てるとよくあるだろ?  相手の方が強かったりしたらさぁ、助けに来た意味ねぇじゃん! 俺等って格闘とかに長けている訳じゃないんだしさ。犯人に捕らえられるのが落ちなんじゃねぇかなぁ? って思ったんだけどな」

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