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ー決心ー60

「そうみたいだぜ。なんか、かっこいいんだってさぁ。同性から見てもかっこいいって、やっぱ、雄介はかっこいいんだよなぁ」


 その言葉に反応して、顔を赤くしたのは望だった。


 望の様子に気付かないわけがない和也が、すかさず突っ込む。


「ん? んー、どうしたんだー? 今の俺の言葉で望が赤くなることはないだろー? 普通なら雄介が顔を赤くするもんだけどなぁ」

「うるせぇなぁ」


 望がそっけなく返すと、和也はニヤリと笑いながら続ける。


「ま、俺からしても雄介はかっこいいしな。そしたら、少なくとも望もそう思ってるんだろうなぁ」


 いたずらっ子のような笑みを浮かべる和也の言葉に、望は深いため息を吐いた。


 階段を上がりきり、地上に出ると、和也が大きく体を伸ばしながら息を吐く。


「はぁー。もう、こんな時間だったんだな」


 和也の視線の先には、水平線から少しずつ顔を出し始めた太陽が、辺りを輝かせている。


「ホント、大変な日だったぜ」

「ま、確かにそうやなぁ。俺らも犯人達から逃げるの必死やったしな」

「そういや、お前らの方はどうだったんだ? 俺が捕まってからさぁ」

「まー……とりあえず、逃げるのに必死やったってことやなぁ」


 雄介が簡潔に答えると、和也は納得したように頷いた。


「そりゃ大変だったよな。ところでさ、あの病院の院長や他の連中が捕まっちまったってことは、あの病院ってどうなるんだろうな?」

「とりあえずニュースにはなるやろうし、病院の信用はがた落ちやろうな。そしたら患者さんがうちの病院に流れて来るんやないか?」

「ますます、うちの病院が忙しくなるってことかぁ」

「ま、そういうことやろな」

「俺は忙しい方が好きだからいいけどな」

「ああ、確かに。それは俺も和也と同じやな」


 望と和也がそんな話をしていると、二人の間に入って来たのは裕二だった。


「あの病院は私が買い取ることにするよ」


 突然の宣言に二人が驚いた表情を浮かべる中、裕二は淡々と続ける。


「確かに私の幼なじみは悪いことをしたけれど、あそこで働いているスタッフたちは悪くない。だから、彼らの仕事を守るためにもね」

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