「そういうことやったんか……」
そう雄介が和也の言葉に答えていると、雄介の横に立っていた望が大きな溜め息を吐く。
そして呆れたように言うのだ。
「お前なぁ……よく、こんな腕で俺を支えたよなぁ」
「へ? あ、ああ……」
そう、どもりながら雄介は怪我した腕をさりげなく隠したのだが、もう望に見つかってからでは遅いだろう。
「今更、隠したって遅いんだよー」
と望より先に言葉を発したのは和也だ。
「そういうことだ……。まったく、お前はなぁ」
「しゃ、しゃーないやんか……」
「俺なんかを支えたら、余計、悪化させる可能性だってあるんだからな。お前には今は夢があるんだろ? それだったら、むちゃはすんじゃねぇよ」
雄介は今の望の言葉に少し考えたのであろう。しばらく黙っていた雄介だが、
「スマン、そうやったな……」
「ま、まぁ、いいからさぁ」
和也は雄介に、そう言い、今度は望の方へと向き直し真剣な表情になると、
「今は、雄介にばかり構ってられないだろ? 俺達は行くぞ!」
「言われなくても分かってる」
二人は視線を合わせると行動を始める。
そんな中、歩夢は雄介へと歩み寄り。
「雄兄さん……兄さんに怒られちゃったねぇ」
「怒られたけど……。普通のことやろ? 今のは俺が悪いんやし、せやから、望に言い返す言葉はないってところやな。望にはなんも隠し事は出来ないってことやんなぁ」
「隠し事!? 雄兄さんは兄さんに隠し事あるの?」
「あるわけないやん……恋人同士やし、望とずっと一緒に居たいと思っておるしな」
「そんなに、雄兄さんは兄さんのこと好きなんだ。やっぱ、僕には雄兄さんを好きになる資格なんてないのかなぁ? って今の言葉でそう思ったんだけど……」
そう寂しそうに顔を俯け言う歩夢だが、何か企んでいるのか、俯いた後には雄介には見えないように口先を上げている。
「あ、いや……あー……」
歩夢の思った通りの反応というところであろうか。さっきまで勢い良く雄介は望のことが好きだということを高々と宣言していたのだが、今の歩夢の言葉でどうやら動揺してしまったようだ。