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ー決心ー101

「望の言う通りだな。雄介の人を助けたいって気持ち、俺にだってすっげぇ分かるけどよ。独り身なら、自分を犠牲にしてまで人を助けてもいいけどさ、今は大事な恋人がいるんだから、心配をかけねぇ方がいいんじゃねぇのか?  望だって、お前が怪我していなきゃ、救助することを許してくれたかもしれねぇが、お前は怪我している訳だからなぁ」

「そういうことだな」

「ほな、力がありそうな人を探して、上からは引き上げてもらって、下から多少押し上げる人がいれば、何人かは助かる訳やな?」

「まぁ、多分、怪我していない人は半分以上いるから、その人たちは全員脱出させちまった方がいいかもな」

「せやな……」


 雄介は立ち上がると、乗客に説明し、怪我をしていない人たちを大人から子供まで、雄介が割った窓から脱出させていく。


 こういう事故に巻き込まれた時、人は他人とか関係なしに助け合いの心が芽生えるのか、我先に助かりたいという人間はおらず、まずは女性や子供を先に助ける作業をし、自力で上がれる人間は上がっていっていた。


 そして今は、雄介たちの他に怪我人だけが残っている状態になっていた。


「ま、これで、後は水が上がってくる前に救助に来てくれるのを待つだけやな」

「そうだな」


 少し安心したような望たち。でも水がゆっくりと上がってきているのは間違いない。後は時間の問題であろう。


「とりあえず、俺は大丈夫かもしれないけどさぁ。裕実のとこは大丈夫なのかなぁ?」

「どうだろうな?」

「望ー、そのPHSでさぁ、新城と連絡取ってくれねぇ?  別に裕実の様子を聞くって感じじゃなくてもいいんだけど、あっちの様子を聞いてほしいんだけど……そうすりゃあ、新城のことだから、何のために望が新城に電話してきたかって気付くだろうしな。アイツって、そういうとこ勘が鋭いしな」

「そうだな。和也も心配するような恋人がいるんだもんな。でも、新城は別に悪い奴ではねぇと思うんだけどなぁ」

「望にしてみたら、悪い奴じゃねぇかもしれねぇけど……俺からしてみたら、新城はトラウマなだけなの」

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