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ー決心ー102

「分かったよ……」


 望はそう答えると、新城のPHSへと電話をする。


 裕実たちがいる電車は、望たちがいる電車のように横転していないおかげなのか、今はその作業が終了し、事故現場の近くに救護室を設けて治療を行っているらしい。


「……ところで、吉良先生から私に電話をかけてくるのは珍しいですよね? 私に何か聞きたいことでも?」


 颯斗は和也が裕実のことを心配して望に電話をかけさせたことに気付いたのか、それとも違う意味でそう聞いたのか――そこは分からないが、そう問いかけてくる。


 望は一瞬、颯斗の言葉に胸をドキリとさせたが、ふっと切り返せる言葉が浮かび、


「新城先生たちの方は大丈夫だったのかもしれねぇが……俺たちがいる電車の方が状況が深刻なんだよ。それで、レスキュー隊の人たちに早く助けに来るようにお願いしたいんだけど……」


 望は今、自分たちが乗っている車両の状況について颯斗に説明をする。


「分かりました。そういうことでしたら、レスキュー隊の方々に言ってきますよ」

「ああ。お願いするよ。とりあえず、俺たちがいる車両は本当に切羽詰まっている状況なんだ。車体は横転しているし、この雨で車内には水が溜まってきちまっているから、これが溜まってくれば、俺たちも危ない状態になるからな」

「分かりました。早急にそちらに行ってもらえるようにレスキュー隊の方々に頼んできますよ」

「マジに頼むぜ……」


 望はそう言うと、電話を切った。


 そして溜息を吐くと、


「とりあえずさぁ、アイツには一瞬、怪しまれたけど、どうにか切り抜けておいたぜ」

「それって、もしかして? 『救助を頼む』って望が言ったことか?」

「まぁ、そうだな……。『吉良先生が私に電話をかけてくるなんて珍しいですね。何か、私に用事でも?』って聞かれたんだよな。マジ、そん時は焦ったぜー。ホント、アイツの言葉って怖いよなぁ。まぁ、逆に言えば、あの質問の仕方だと、答えられる選択肢は沢山あるんだけどさぁ。アイツの聞き方だと、『梅沢さんが本宮さんの心配をして吉良先生にかけさせた』ってような質問の仕方に思えて仕方ないんだけどな」

「まぁな」

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