「まぁ、これで、多分、大丈夫だと思うけどな」
「どうだろうな? そうだといいけどよ」
「ま、とりあえず、今は助けを待つしかないんやけどな」
確かに、今の望たちの状況では、本来こんなに余裕を持って話をしている場合ではない。だが、逆に平常心を保つために、ごく普通の会話をしていた方がいいということだろう。
そして、十分もしないうちに望たちが乗っている電車にもレスキュー隊が救助に入り、どうにかギリギリのところで望たちは助かるのだった。
雄介や歩夢は救助されれば、あとは帰宅するだけで済むのだが、望たちはそういうわけにはいかない。これから病院へ向かい、まだまだやらなければならないことがたくさんある。
望と和也が病院へ戻ると、あの時の大地震のようにロビーがごった返していた。
あれだけの事故なのだから、混み合わないわけがない。
望は裕二を見つけると、
「俺たちはどこに入ればいいんだ?」
「君たちは手術室に入ってほしいかもしれないなぁ」
「分かった。何か思ったより患者の数が少ないように思えるんだけど……」
「そりゃ、私が経営しているもう一つの病院にも患者を運んでもらっているからねぇ」
「あ、そうだったんだよな……。ってことは、今はそっちの病院でも患者さんの受け入れ体制がしっかりしてるってことなんだな」
「私が経営しているのだから当たり前だよ。今まではダラダラとしていたかもしれないけど……私が経営者になったのだから、ダラダラとはいかせないよ」
「そうだよな。ま、とりあえず、俺たちも手伝うからよ」
「ああ、よろしく」
望は裕二との会話を終えると、和也に合図を送り手術室へと向かい、次々と患者を助けに入る。
次の日の明け方には、ほとんどの患者を助け終え、ようやくゆっくりとできた望たちであった。
望と和也にとっては、二晩寝ずに働いたことになる。