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ー決心ー110

「親父に頼めば大丈夫だからな」

「せやったな。望は院長の息子だったんやっけなぁ」

「そういうことだからよ。そういうとこ、何かいいよなぁ」

「せやね……」


 雄介は望に笑顔を見せる。


 何だか久しぶりの雄介の笑顔に、望は少し安心したのか、一つ息を吐くと、


「やっぱり、家に帰って来て、お前が居ると安心する」


 望はそう言うと、無意識なのか、疲れていたのかは分からないのだが、雄介の肩へと寄りかかり目を瞑るのだ。


「……望?」


 雄介は優しく小さな声で望の名前を呼んだのだが、望から聞こえてきたのは寝息だけだ。


 雄介はその望の寝顔を見て微笑む。


 それから、どれくらい経ったのであろうか。陽はいつの間にか天辺の位置から少し下がったところくらいで、望は目を覚まし、目を擦りながら雄介のことを見上げるのだが、目を細めている。


「ん? やっと、目覚ましたんか?」

「あ、ああ……ぅん。んー、何か雄介のことが良く見えねぇんだけど、何で俺、ここに居るんだ?」

「あ、スマン! 望が帰って来てから、いつの間にかここで望が寝てまったから、眼鏡外しておいたんやって……」


 雄介はそう言うと、テーブルの上に置いておいた望の眼鏡を望へと渡す。


「何だ……そういうことだったのか」

「よっぽど、疲れておったんやな」

「あ、ああ、まぁな……久しぶりに二日寝てなかったしな」

「やっぱり、そん位寝てなかったんや……。あんだけの事故やったんやもんなぁ。やっぱ、医者って思ってた以上にハードそうなんやなぁ」

「そうなんだよ。雄介の前の仕事は、最高でも一晩寝ないくらいだろ? だけど、俺達の仕事は本来なら休みは不定期だし、二日寝ないなんてしょっちゅうなんだからな……それで、弱音なんか吐いてる暇はねぇしよ。 ま、弱音は吐かねぇけどな。 それに、患者さんを前にしたら、そんなこと思わねぇけどな」

「やっぱ、望は凄いな」

「凄くはねぇよ……当たり前なことをしているだけだしな。これから雄介だって、こういう風になるんだからな!」


 望は立ち上がると、雄介の瞳を見据える。


「そうやったな……望のおかげで、もっともっとやる気が出たわぁ。望に追っ付くためにも休んでいる暇が無いって感じがしてきたし、明日からでも学校に行くかなぁ!」

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