「そうじゃなきゃ困る……」
「……へ? どういうことや?」
「聞かなくても分かるだろ?」
そう言うと、望はいきなり立ち上がり、雄介から離れどこかに行ってしまう。
「ちょ、望? どこ行くん? 怒らせたんやったら、俺が悪いしー」
雄介は望の後を追いかけて行くと、望は何故か二階へと上がってしまっていた。
雄介は首を傾げながら望の後を付いて行く。
そして望は寝室へと入ると、ベッドの上へと横になるのだ。
「なーんや……まだ、眠かったんかいな」
と雄介は望に声を掛けたのだが、望からの返答はない。
「やっぱ、俺が望んこと怒らせたんか?」
雄介はベッドの上に横になっている望を後ろから抱き締めるのだ。
確かに望は黙ったままではあったが、どうやら特に怒っている様子はないようだ。 今だって雄介が望の後ろから望のことを抱き締めても怒っている気配はないようにも思える。
「どないしたん? 眠くなったんか?」
「違ぇーよ……」
やっと声がしたかと思えば望は枕に顔を埋め、籠もった声で否定の声を上げる。
「ほな、どうしたん? 言うてくれへんと分からんのやけど……」
「じゃあ、俺がお前に言いにくいことって言ったら? どんなことがあるんだよ……」
「『好き』はさっき言っておったしなぁ、ほな、『愛してる』か?」
「それだと『好き』と一緒だろうが……」
「他に望が言いにくいこと? 思いつかへんねんけど……」
雄介は瞳を宙に浮かせ首を傾げて考えているようなのだが、望が言いたいことはなんのことだか浮かんでこないようだ。
「なら! 答えさせてやるよ!」
望はいきなり起き上がると、雄介の体を抱き締め雄介の唇にキスをする。
「……ン」
雄介は嬉しそうにその望からのキスを受け取ると、
「そういうことやったんかいな。確かにそれやったら、望の口からは言えへんよなぁーって、今日の望はそれ以上のこともお望みだったりするんか?」
望はその雄介の言葉に顔を赤くする。
ということは雄介の言葉通りということであろう。
「……ったく。早く気付けっつーの……。昼間のこの時間に二人だけで居られる時間は少ないだろうが……」