やはり今日の雄介は意地悪な雄介で通すのであろう。 望が何か言うまでは動かないのかもしれない。
望は感じながらも何か思い出したのか雄介のことを真剣な目で見上げる。
それに気付いた雄介は動きを一旦止め、
「急にどないしたん? 真剣な目で俺んこと見て?」
雄介は首を傾げながら望のことを見る。
「この前の電車事故の時に腕以外に頭とか打ってないか?」
「……へ? 大丈夫やと思うねんけどな。ま、もしかしたら、頭打っていたのかもしれへんけどな。気は失ってみたいやし」
「気失ってたぁ!?」
雄介のその言葉に望は体を起こす。
「って、あの……最中に……そないなこと思い出さなくてもええやんか」
「それはいいとしてっ!」
「良くないわぁ」
雄介は呆れたような溜め息を漏らすのだ。
「良くない訳ねぇだろうがぁ。って、もし、本当に頭を打ってたら、大変なことになるんだぞ!」
「大丈夫やって……頭とか痛ぁないし、コブとかもないしな。って、どないして急にそないなことを思い出したんや?」
「大丈夫ならいいんだけど。いや、やっぱ、明日、病院に来てくれよ。今はコブとか無くても脳内で内出血してたらヤバいからさ」
「あの……望? 答えになってへんのやけど?」
雄介は苦笑いをしながら、申し訳なさそうに言う。
「あ、いやな……雄介が急にその……意地悪になったから、頭を打って性格が変わっちまったのかなぁ? って思ったんだよ」
「俺は至って普通やで……。普通に今日は意地悪な俺で行こうかなぁ? って思うただけやし……ほなら、いつもの俺の方がええか?」
「あ、ああ、そうだな。 今日はそうしてくれ。明日、病院で検査して、俺が安心してから、意地悪なお前でいいからさ」
「でも、新城に診てもらったんやで……アイツなら、大丈夫やろ?」
「アイツはあくまで外科だから、脳外科とは違うから専門外だからな。うちの病院は脳外科と外科は別だからな」
「そうなんか。専門外やと分からんもんなんか……」
「ま、一応、今は研修医時代に色んな科を回って、自分に合いそうな科を選ぶって制度はあるけどな」
「そうだったんやな……新城先生やったら、医者としては大丈夫やと思うねんけどなぁ」