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ー平和ー17

「話は一応解決したし、俺たちがここに泊まっている理由はねぇしな。それに、俺たちは帰ってからラブラブイチャイチャするしよ」

「そういうことかいな」

「もしかしたら、望から聞いてねぇかもしれねぇが……俺たちも今は一緒に住んでんだよ」

「そうやったんかぁ。恋人とずっと一緒に居れるってええやろ?」

「ああ! しかも、俺は毎日裕実を抱……い……」


 と、和也が最後まで言わないうちに、隣にいる裕実が顔を赤くしながら、


「余計なことは言わなくてもいいですからっ!」


 と突っ込む。


 そんな二人の姿に、雄介は軽く微笑むと、


「相変わらずなんやな」

「そ! 俺たちは喧嘩もせず、毎日ラブラブイチャイチャなわけだしな」

「とりあえず、雄介さんたちも早くまたラブラブになれるといいですね」

「せやな……。ほな、俺は望んとこに行って来るな」

「おう! 俺たちは勝手に帰らせてもらうぜー」


 雄介は立ち上がると、望が向かったであろう部屋の前へと向かう。


 二階までは自然に来られた雄介だが、いざ部屋の前まで来ると、なかなか声を出せないでいた。


 自分たちの部屋の前にあるドア。いつもなら自然と開けられるのに、今日はなかなかそのドアに手をかけられない。


 そのドアの向こうには悪魔がいるわけでもない。ただ、自分の恋人がいるだけだ。それなのに、今日の雄介はそのドアに手を掛けることができないようだ。


 雄介は一度深呼吸をすると、いつものようにドアを開けて望がどこにいるのか探そうとした。しかし、部屋の灯りは点いておらず、人がいる気配すらない。


 雄介は部屋の灯りを点け、もう一度周りを見渡す。すると、望は眼鏡を外し、うつ伏せの状態でベッドの上に横たわっている姿が目に入ってきた。


 その望の姿に、雄介は安堵のため息を漏らすと、ゆっくりとした足取りで望が横たわるベッドへと近づいていく。


 そして雄介はベッドの端に腰を下ろし、瞳を閉じている望の顔を覗き込む。


 どうやら望は疲れて寝てしまったらしい。耳を澄ませば、規則正しい寝息が聞こえてくるのだから。


 雄介がさらに望の顔を覗き込んでみると、頬には涙が伝った跡が残されていた。


 普段の疲れもあったのだろうが、もしかしたら泣き疲れて望は寝てしまったのかもしれない。

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