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ー平和ー26

「……へ? そうなのか?」

「確か、そうだったと思うぜ。まぁ、今は俺だけしか見てねぇから、お前がもし望にそっくりな奴を見てしまったら、死が近いって話。とりあえず、まだ俺しか見てねぇから大丈夫だとは思うけどさ」

「……って、俺、どこも悪くねぇけど?」

「まぁ、ドッペルゲンガーについて詳しくはよく分からないけどさ、病気とか交通事故で死ぬとかは分からねぇよ。それに、やっぱ、俺の勘違いだったかもしれねぇしさ。急いでここに戻って来ても望はココに居たしよ。小児病棟って、外科病棟からしてみたら隣の棟だけどさ、ここからは離れてるしよー。だから、俺が走って帰ってくれば全然、俺の方が早い訳じゃん」

「ん? ちょっと待てよ。今のお前の話を聞いてると、やっぱり俺が小児病棟に居たってことが前提になってないか?」

「ま、それは……もしってことで……」

「ま、それはあまり有り得ない話だけどなぁ」

「そういうことー。ま、とりあえず今回は俺の勘違いってことにしておくよ」


 和也はそう言うと、話を変え、


「飯、食いに行こうぜー」

「あ、ああ、そうだな……スッカリ忘れてたぜ」


 望はパソコンを消し、立ち上がると、和也と二人でいつもの食堂へと向かった。


 今日は和也が仕事をしていて、いつもより少し遅めの昼食になってしまった。


 食堂はピークの時間を過ぎたおかげで満席ではなく、少し席にゆとりがある状態だ。


 二人はセルフでご飯を選ぶと、窓側にあるカウンター席へと向かう。


 今日は裕実の姿は既になく、和也は久しぶりに望と二人で昼食をとることになったようだ。


 望は中庭をぼーっと眺めながら一人で昼食をとるのが日課になっていたのだが、裕実と和也の休憩時間が重ならない場合は和也と食べる。


 とりあえず休憩時間というのは、一日の仕事の中で一息つく時間なのだから、何をしようと自由だ。


 だから望は何も考えずに外を眺めるのが好きだった。


 だが今日は隣に和也が来ると、どうしても和也は大人しくしていられないらしく、望にはぼーっとする暇をくれやしない。


 和也がひっきりなしに望に話しかけてくるのだから。


「なぁ、和也……少し黙っててくれねぇかな?」

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