望は和也に向かい、少し睨みをきかせていた。すると急に和也の顔色が変わり、何故か望と望の後ろの方を交互に見て、目を見開き、口をぽかんと開けた。
「や、やっぱり、いたよ……の、望のドッペルゲンガー!」
「はぁ!?」
望は和也の言葉を聞きながらも気にせず流しているようだ。まるでそんなことは関係ないかのように、昼食を口に運ぶ。
「ちょ、おい! 望の後ろの方を見てみろよ! 絶対に望のドッペルゲンガーがいるからさ! 本当にマジだから! 俺が嘘を吐かないのは知ってんだろ?」
「つーか、もし、ドッペルゲンガーなら、寧ろ俺はそれを見ちゃいけないんだろ?」
「あ、まぁ……確かにそうなんだけどよ。でも! でも! とりあえず、見てみろよ! ってか、俺の夢ではないことは確かだったんだな」
和也はひとまず納得した様子で、もう一度確認するかのように、約三十メートル先にいる望のドッペルゲンガーを見続けていた。
和也がちらりとそちらを見た後、今度は何か違和感を感じたようで口を開いた。
「ん? 望に似てるのは確かだけど……よくよく見ると、もしかして、眼鏡がない!?」
「まだ、見てんのか?」
「ああ、まぁな……。なんか、向こうにいる望は、確かに望にそっくりなんだけど眼鏡掛けてねぇんだよなぁ。だから、ドッペルゲンガーではないのかも? ドッペルゲンガーじゃなければ、望が見ても早く死ぬってことはねぇんだろ?」
「和也がそう言うんだったら、そうなんじゃねぇの?」
「だったらさぁ、望もちらりとでもいいから見てみろよ。そしたら、俺が嘘を吐いてないことが証明されるんじゃんか……」
望は仕方なく、和也の言う方へ顔を向けた。すると、和也の言葉通り、望そっくりな人物が座っている姿が目に入ってきた。
「な、本当だろ?」
「あ、ああ、まぁな……」
望は気になりながらも昼食を続けた。しかし、またしても和也が目を大きく開き、何か言いたそうに口を開けている姿が視界に入った。
「……ったく、どうしてお前は昼食をゆっくり食えねぇんだよ。やっぱり、今日も俺一人で食べれば良かったぜ」
「ちょ、ちょっと待った! 違うって! マジに、お前の後ろ……」
和也は焦った様子で口を開き、何かを伝えようとしているが、言葉にならず、口をパクパクさせている。
「兄さん……お久しぶりです」
「……兄さん!?」
その言葉に望が後ろを振り向くと、そこには和也が言っていた望そっくりな人物が立っていた。