朔望は和也の顔を見てクスリと笑った。
「言っておくけど、僕は沢山居たよ。和也よりは経験豊富な方だと思うけどね」
「経験は豊富ってことは、逆に言えば、恋人という恋人はいなかったってことか? それとも愛せる奴がいなかったってことか?」
「和也は本当に色々と聞いてくるんだね。ま、いいけどさ。基本、仕事の方が忙しいから、恋人はあまり作らなかったかな? 仕事が忙しいと恋人のことを構って上げることが出来ないからね。 だから、恋人というか特定な人は作らなかったって言った方がいいかな?」
「お前の仕事のことを理解してくれる恋人がいなかったってことか?」
「それは、どうだろ? 僕は基本的に作らなかったって言った方が正解かもね。いや、寧ろ、僕のタイプがいなかったから、恋人はあまり作らなかったって方が正解なのかもしれないなぁ」
「じゃあ、タイプって……どんな人がタイプなんだ?」
和也の質問に、朔望は再びクスリと笑う。
「タイプねぇ、君のパートナーって言ったらどうする?」
「……へ? 俺のパートナーって……? ちょ、ちょ、ちょっと待てよ! 裕実はお前なんかに絶対っ! 渡すつもりはねぇからな!」
和也はそう言って、瞳に睨みをきかせて朔望を見据える。
そんな和也の姿に、朔望は笑って言った。
「違う! 違う! 僕は本宮さんには興味ないから安心して。『和也のパートナー』っていうのは、兄さんのことなんだけど……」
「……ん? 兄さんって望のことか?」
「そういうこと……」
「って、そういうこと……じゃねぇだろ? お前そっくりな望がタイプって……お前と同じ顔してんだろうが……」
「本当に和也って、面白い人だねぇ。自分と同じ顔の人とヤるって面白そうじゃない?」
「それなら、鏡でも見て、自分でしろよな。言っておくけど、望には親父さん公認の恋人がいるんだからな」
「うん、知ってるよ。桜井雄介さんでしょ?」
流石に望も、仕事をしながら二人の会話を耳をダンボにして聞いているようだ。望は書類に目を通しながらも、たまに和也達の方へと視線を向けている。