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ー平和ー48

 朔望達が出て行った後には全員の溜め息が漏れる。


 今まで朔望達は台風のようだった。話すだけ話をして、あっという間に去って行ったのだから。


「まったく、ホント、勘弁してほしいよなぁ。でも、あれで良かったのかな?」

「いいと思いますよ。和也のおかげで、二人共、お互いの気持ちに気付いたみたいですからね」

「そうだよな。でも、あの二人なら、確かに朔望の方が完全に上だよなぁ。年上だし、経験豊富そうだし、テクニックありそうだしー、歩夢は明日には完全にネコ側に目覚めそうだしなぁ」


 和也は二人のことを想像しているのか、にやけてしまっていた。


「そんなことを想像してたら、裕実のこと抱きたくなってきたんですけどー!」


 和也はそう言うと、裕実の体を抱き締めるのだ。


「ちょっと! 止めて下さいよー。それに、そんなこと今、言わなくても僕のこと毎日抱いてるじゃないですかー」


 裕実は和也の腕の中で少し暴れながらも顔を赤くし、少し嬉しそうな表情をしているのだから全くもって悪くはないのであろう。


 そして裕実は少し息を吐くと、


「ホント、和也は僕のことが好きなんですね。そんなに毎日のように僕のことを求めてくれて。 ホント、僕……和也と一緒になって幸せですよ」

「当たり前じゃねぇか。言うけど望と一緒にならなくて良かった思う位、裕実のことは今は好きだからな。やっぱ、望は雄介の方が合ってんだよ。もし、あの時、俺が望と付き合っていたら、雄介みたいに今まで長く付き合っていられなかったと思うしよ。自分だけが好きでも、他人の心が他に向いていたりしたら、意味が無いしな。やっぱり、長く付き合うんなら、心も好きじゃなきゃダメだってのも裕実のおかげで分かったんだよ。今は完全に望は雄介のことが好きみたいだし、望も雄介と居て幸せなら、いいと思う」

「悪いが……和也と俺とは仕事上では最高なパートナーだけど、これが恋人となると違う気がするんだよな。俺も今は雄介が恋人で良かった気がする。確かに今まで色々あったけど、雄介も消防士の仕事を止めて、何か前より平和に暮らしているような気がするしよ」


 流石に望から雄介に抱きつこうとはしないのだが、望は雄介に向かい笑顔を向けるのだ。

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