「せやな……。確かに、今は前よりのんびりした時間を過ごしてる気がするわ。消防士時代って、毎日のように命の危機を味わっとったしな。ホンマ、望には心配ばっかりかけてたけど……今はホント、穏やかな時間があるって実感してるわ」
「じゃあ、仕事辞めて良かったってことか?」
「そうやな。そないなこと、今まで気付きもせんかった。こんな風にのんびりできる日が来るなんて思いもせんかったし。もし望や和也、裕実に会ってへんかったら、俺はもうこの世におらんかったかもしれん……。出会いってホンマ、運命やと思うわ」
「ホントだよなぁ。日本に一億五千万人も人がいる中で、こうして出会えたんだから、奇跡みたいなもんだよ」
「そういうことやな。しかも、こんな仲のええ友達がおるってのは、ホンマにありがたいことやわ」
「僕もそう思いますよ。雄介さんたちに出会えたおかげで、今があるんですから。過去のことが嘘みたいに思えるくらい、幸せです!」
「へぇー、和也と裕実ってあんまり喧嘩しないのか?」
「望にそう聞かれるとは思わなかったぜー。まぁ、そこはいいとして……俺たちは基本、喧嘩しねぇよ。お互いのこと、よく分かってるしな」
「でも、お互い分かり過ぎるのもアカンやろ。この前、俺たちみたいになんで……」
「雄介は優しすぎなんだよ。前に姉さんにも言われてただろ?『押しが弱い』ってさぁ。雄介がもっと望に対して積極的にいってりゃ、前みたいなことにはならなかったんじゃねぇの?『望が忙しそうだったから声をかけられなかった』って、そんなんじゃダメだろ。もし声をかけてたら、何年も行き違う生活にならなかったはずだぜ」
「確かにそうやんなぁ。ホンマ、忠告もらってたのに気付けへんかったのがアカンわ」
「だろ?それに、望の性格からして、望から雄介に声をかけることは少ないんだから、雄介が動かなきゃダメなんだよ」
「せやな……でもな、最近は望から色々と言ってくれることもあるんやで」
その言葉に和也が反応し、身を乗り出す。
「例えば、どんなことを言ってくれるんだ?」