「ま、流石に雄介もその時は望に意識はしてなかったみたいだけどな」
「まぁ、流石に四、五歳位で恋になんか目覚めないでしょ。ま、兄さんの場合、その後、何年後に雄介さんと出会ったみたいだけどね。それも運命ってことになるよね?」
「だよな……」
朔望は選んだ品物を手にすると、
「僕は選び終えたけど、和也は?」
「ま、俺も一応はな……って、別にお前はこんなとこに来なくてもお医者さんゴッコは出来るんじゃねぇの?」
そう和也は少しにやけ顔で言ったのだが、
「家に帰って来てまで仕事道具を見たくないよ。それに、僕は仕事道具をそういう風には見てないからね。それなら、たまにこういう店に来て新作を試した方が楽しいよね」
「なるほどなぁ、お前も仕事には真面目って訳なんだな」
「だから、それは前から言ってるだろ。命を助ける仕事なんだから、ふざけるってことはしないよ。しかも小児科医ってのはね……一番気を使うんだよ。仕事で失敗なんか出来やしない。 万が一失敗なんかしたら、親に訴えられてしまうってのが現状。医者の中で一番ストレスが溜まる仕事かもしれないね」
「でも、お前が選んだ道なんだろ?」
「ま、確かに……そうではあるんだけどね。親のレールを走ってくるってのも楽じゃないよ」
「でもさ……今は就職難って言われている時代に仕事先があるんだからいいんじゃねぇの? 今は仕事をしたくてもできない人が沢山いる世の中なんだからさ」
「ま、確かに、それはあるのかもね」
「それに医者になるには勉強も必要だけど、金も必要だろ?」
「まぁ、そうだけど……。そう言うってことは和也も本当は医者になりたかったとか?」
「そういうことだよ。俺の父親も医者だったんだけど、若い時に事故でな……まぁ、母親一人で俺のことを育ててくれたんだ。だから、贅沢なことは言えなくて、やっぱし、母親も看護師だったから、俺も医療関係に進みたいと思って、看護師にしたんだけどな。でも、今の仕事に充実した日々を送っているから、それはそれでいいかな? って思っているけどな」
「和也って、そうだったんだ。じゃあ、裕実さんはどんな人っていうか、どんな過去があるの?」