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ー平和ー54

「裕実の過去!?」


 和也は声を裏返すと、今度は低い声で、


「裕実の過去のことは、お前には関係ないことだろ? アイツ……恋人の俺にだって、なかなか言ってくれなかったことなんだから、俺の口からは簡単に言えねぇよ」

「ふーん……。裕実さんにはみんなには言えない暗い過去があるって訳ね」

「そういう事だ。ということだけ言っておく。裕実が言ってもいいって言った時になら、お前に話してもいいけどな」

「まぁ、なんとなくは想像出来るけど……。今はあんなに明るい裕実さんが昔は暗かったってことだね?」

「ま、そういうこと。俺から言うのもなんだけど、裕実があんなに明るくなったのは俺達のおかげかな?」

「俺達ってことは和也だけではなく、兄さんや雄介さんもってこと?」

「そういうこと……」


 和也と朔望は店から出ると、


「ま、お互いこれで恋人のこと楽しませてやろうぜ」

「そうだねぇ。僕は今晩辺りも歩夢のことを襲うよ」

「俺は今日は裕実がいないから、明日以降かなぁ? ま、まぁ、機会があれば、今日買った玩具の反応を話そうぜ」

「そうだねぇ。歩夢の場合、まだまだ仕込みがいがあるしね」

「ま、報告を楽しみに待ってるよ」


 そう言うと二人は別れ、それぞれの家へと帰って行く。


 和也は部屋に帰っても誰もいない。久しぶりに和也一人だけの時間となる。


 裕実が居る時は、この時間には既に夕食やお風呂等を終え、リビングにあるテレビでも見ながらまったりしている時間だ。


 和也は先程帰りに寄ってきたコンビニで買ったカップラーメンをリビングのテーブルの上に置き、お湯を沸かす。


 裕実がいる時なら簡単な料理位はするのだが、今日は和也一人の為、夕食をいつもより簡単に済ませたいと思ったのであろう。和也はコンビニでカップラーメンとおにぎりだけの夕食にする。


 リビングのテレビを点けてみても、いつもとは何かが違う部屋。


 人が一人いないだけで、例えテレビを点けていても何だか寂しい気がしているようだ。


 和也と裕実の家は春坂病院近くにある五階建てマンションの三階に住んでいる。部屋は和也が一人で住んでいる時は1Kではあったのだが、今は2DKある部屋だ。

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