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ー平和ー62

「確かに、そうですよね。 でも、連絡しといた方があんまり心配しないかと思いますけど……」

「……って、やっぱり、裕実さんと和也さんは喧嘩してないってことだよね? 裕実さんがそんなことを言っている訳だしー」

「でも、それは……やっぱり、喧嘩していても好きな人は好きですから……心配はさせたくないって思ったからですよ!」


 裕実はそう真剣で、少し怒ったような口調で言うのだ。


「ま、そういうことか……」


 朔望はそう意味あり気に独り言を漏らす。


「とりあえず、雄介さん達に連絡しとく? ま、今は危険を承知でねって事になるんだけど……。今のこの状況では、携帯をいじっていて犯人達に見つかる可能性は十分にあるし」

「分かってる。そんなこと十分承知なことくらいな。今、雄介達がどこで何をしていて、この事件のことを知っているのか? 俺達は巻き込まれているってことを知らせたいだけなんだよ」

「でも、その方がよっぽど、雄介さんを心配させてしまうんじゃないかな? それに、兄さん、今、ボロが出たね? 今『雄介さん達』って言ったでしょ?」

「だから、今はそんなことは関係ねぇだろ? さっき、言ったばかりだろうが……。とりあえず、携帯貸してくれよ」

「……って、今は絶対にまずいよ。 犯人達と警察達の交渉が終わったみたいだしね。今はとりあえず、大人しくしておいた方がいいみたい」


 そう小さな声で朔望は犯人達の様子をうかがっている。


「……ってさぁ、お前がなかなか携帯を俺達に渡さないからだろうがよ」


 望も先程よりは小声で話をしているようなのだが、少し苛立っているのか声が大きくなってしまったようだ。


 そんな望に気付いたのか朔望は望の顔を見て、『シー』と告げるのだ。


「今、しゃべったりしたら、犯人達に目をつけられるよ。だから、しばらくの間は大人しくしておいた方がいいみたい」


 そんな朔望の言葉に望は溜め息を吐く。


 まさか、こんな目に合うとは思ってなかった筈だ。確かに望達は過去に色々と事件や事故に巻き込まれたことはあったが、今まではどうにか助かって来た。だが今までは雄介が居たり雄介がレスキュー隊員でどうにか助かってきたが、今回はもう雄介はレスキュー隊員ではないのだから、もう望達がこういう目にあっても助けに来れないという事だろう。

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