まだまだ何も変化が無いこの状況。犯人達も動く気配はない。
要求したお金はもう犯人達の手の中にある。きっと、さっき警察に頼んだことは逃走用の車等を用意させている為、犯人達はまだ動かないのであろう。
どうやら犯人があまり動かないところをみると、人質達には危害を加える気は無いようだ。
目的はお金だけなのかもしれない。
それに気付いたのか朔望は望に再び声を掛ける。
「やっぱ、日本人はまだ良心があるみたいだね。アメリカでは、犯人達の要求が通れば、直ぐにでも人質達を殺すのに、日本人は直ぐには殺さないんだからさ。この状況なら、兄さんに携帯を渡して、雄介さん達に連絡出来るかもしれないよ。でも、見つかったら、何をされるか分からないけどね」
「そうなのか? まぁ、いいよ……見つかったら見つかった時だからさ」
ここまで朔望が携帯を出すことを渋ったのは、犯人達の様子をうかがっていたということだろう。
朔望は犯人達が人質に手を出さないことに気付いたのか望に携帯を渡すことを決断してくれたようだ。
「携帯は内ポケットに入ってるから、犯人達に見つからないように取ってよね」
「分かってるって……」
望は朔望の前辺りに座ると、朔望の内ポケットにあるであろう携帯を探す。 そう望達は今、犯人達により後ろ手に縛られているのだから、後ろに手があってか非常にこの状態では取りにくい。
裕実が望をサポートし、どうにか望は朔望の内ポケットから携帯を取ることが出来たようだ。
そして望は後ろ手に携帯を操作し始める。携帯画面が見えない状態では携帯を上手く操作するのは難しい所だ。しかも、いつもとは逆でもある。
文字の位置等はだいたい把握出来ているのだけど、ちゃんと文になっているかは定かではない。
それを裕実が望の後ろでサポートしてくれて二人で協力すると、何とか文章になったのか雄介達にその出来たメールを送信するのだ。
それとほぼ同時に二人は安堵の溜め息を漏らすのだ。
その頃、雄介と和也は当初の予定通りにカラオケ屋に居たのだった。