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ー平和ー75

「そうだったんですか。それは望さんらしいですね。きっと、望さんのことですから、自分の身のことを忘れて、怪我人達の手当てに向かおうとしたんだと思いますよ」


 そう裕実は笑顔で言う。


「……兄さんって、医者としては天職って感じの人だったんだ。って、あの時の僕っていうのは、全くもって怪我人の方に行こうとは思ってなかったしなぁ」

「でしょうね。本当に望さんっていう人は怪我人は放っておけないってタイプのようですしね」

「みたいだね。でも、まさか、あそこで犯人が兄さんの事を撃つとは思ってなかったよ。まぁ、犯人的にも特に人質はいなくてもいいみたいだったけどね……ある意味、僕達はお金の運び屋になってしまっただけだし。普通の姿で、バッグ位なら誰でも持っているんだから、犯人達は自然にあの現場から逃げることも出来たし、あの爆発で、警察も巻き込まれていたし、あの混乱な状況で、犯人達が一般人に紛れ込んで逃げていたなら、警察からも犯人として特定が難しいと思うよ」

「ですよね。僕達がここに監禁されているのも犯人達と共に行動して、犯人達の顔を知ってしまっているから、解放されていないだけですからね」

「そういうことだと思うよ。後、僕達はいずれ犯人達に殺されるのは時間の問題だったかもしれないよね。でも、もしかしたら、犯人達は僕達のことを殺しには来ないかもしれないよ。だって、僕達が本来なら、ここにいなくてもいい存在なんだからさ。銃はただ銀行強盗で脅しに使用としていただけなのかもしれないしさ。ま、後は兄さんの行動も予想外って事になるのかな? それと、本当にあの女性が仮の人質としての人物だとしたら、あの女性は犯人達の仲間な訳だし、やっぱり、僕達は関係ない事だったみたいだしね。要するにわざわざ危険な目に合いに来てしまったって事かな? しかし、犯人達は僕達の様子を見に来ないよね?」

「ですよねー? なら、僕達は逃げても大丈夫なんでしょうか?」

「どうなんだろ? まぁ、例えば、そこの窓からどうにか出れたとしても、下の間取りが分からないと逃げることは出来ないよね? もし、下にリビングかなんかがあって大きな窓でもあったら、犯人達に見つかる可能性は高い。だからなのかもしれないよ。僕達が逃げられないことを高をくくって様子を見に来ないだけなのかもしれないね」

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