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ー平和ー86

 和也は雄介の顔を見上げると、


「とりあえず、雄介、頼むぜ!」

「ああ、大丈夫やって! 任しとき!」


 そう自信ありそうな雄介の表情に、和也と歩夢は安心する。そして雄介は犯人たちの家へと向かった。


 運送屋を装い、雄介は犯人たちの家のチャイムを鳴らす。


 一応は一般宅なのだから、電気が点いているのに玄関まで出てこないのは不自然だと思ったのか、犯人の一人が玄関へと出てきた。


「いつもと運んでくる奴が違うんだな」


 その犯人の言葉に一瞬、目を丸くする雄介。


 やはり拳銃の密輸はもちろん、この犯人たちは他にも何かいけない物を運んでいるのかもしれない。


 そして、犯人たちがまったく疑わないのは雄介の格好だ。一応、雄介はキャップを被っているものの、今日はベージュのつなぎを着ていた。


 一般の運送屋ならもっときちんとしたロゴとかが胸の辺りに入っているつなぎを着ているものだが、今日の雄介の場合、私服であるにも関わらず犯人たちにバレていないことにホッとする。


 きっと、いつもの運送屋も今の雄介と似たような格好をしているのだろう。


「まぁ、一応……これが今回の荷物です」


 そう言った瞬間、雄介はダンボールを下に落とし、体当たりで犯人に向かう。その犯人の一人は腹を押さえ、その場に倒れ込んだ。


 雄介はダンボールの中に入れておいた縄を取り出すと、犯人の一人を捕まえる。もう一人を探そうとした途端、雄介の目の前のドアが開き、その瞬間、もう一度その犯人にも体当たりを食らわせる。


 体格の良い雄介だからこそ、犯人は簡単に倒れた。雄介は再び縄で縛り上げていく。


 一息ついた雄介は、裕実たちがいるであろう二階へと向かう。


 雄介はドアを開けようとしたが、鍵が掛かっているため扉が開かなかった。


「裕実、大丈夫か?」


 雄介が中にいるであろう裕実たちに声を掛けると、中から裕実の声が聞こえた。


「はい! 僕たちは大丈夫です! ですが、このドアは内側から開かないんですよ!」

「……って、外側からも開かへんねんけど?」

「もしかしたら、犯人の誰かがこの部屋の鍵を持っているのかもしれませんよね」

「犯人の誰かが鍵を持っとるやって!?」

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