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「そっかぁ.....嫌かぁ。なら、仕方ないね。」
「そうだね.....仕方ないね。」
漫画やアニメなら、不吉なオーラと共にゴゴゴゴゴと音が立ちそうな雰囲気を醸し出す。顔は笑っているが、目は光がなかった。
「あの、目が怖いんですけど。」
「ふふふふふ」
「あはははは」
怖ぇ!!超怖ぇよこの2人!!早く逃げ出したい衝動にかられ、なんとか縄を解こうともがく。
だが、縄は一切緩むことは無かった。それどころか、更に締まってるような.....!?
「暴れれば暴れるほど、その縄はきつくなってくる。大人しくしといた方が身のため。」
「そうそう、大人しくこっちを見てみなよ。」
俺は心の中で舌打ちをし、ゆっくりと顔を上げる。そして視界に飛び込んできた光景に、目を疑った。
「そ、それは!!」
いつの間にやら用意されていた机の上に、今では絶対に手に入らない、俺の推しのグッズが置かれていた。
「ど、どどどこでそれを!?!?」
「これ、君の推しキャラだよね。しかも入手難易度MAXのグッズだ。こんな所にあるなんて奇跡じゃない?」
「ケモっ娘フレンズ、可愛いよね。僕も集めてたんだけど.....」
男性の先輩はニヤニヤと笑う。
ケモっ娘フレンズとは、獣が擬人化してデフォルメされたシリーズで、キャラごとに数多くのグッズがある。今俺の目の前に置かれているのは、俺の推しである娘の、数年前に出たグッズだ。
「君が入部するなら、あげてもいいよぉ?」
「します!!入部しますぅ!!」
つい、言ってしまった。欲望には逆らえなかった。
「はいじゃあこれ書いて。」
「書きますぅ!」
人間、時には何かを捨ててでも得たいものがある。それが俺にとって、今だった。プライドや今後の学校生活を捨ててでも、これが欲しかった。
だって、数量限定生産で即完売したやつだぜ?3時間並んだ挙句買えなかったんだぜ?プレ値がつきすぎて、転売されてるやつは高すぎて手が届かないし、あげるなんて言われたら、そりゃあこうなる。
「はい、確かに。ほら、ご褒美だよ。」
「ありがとうございますぅ!!」
男性の先輩からグッズを受け取り、すぐさま緩衝材入りの小物ケースに大事にしまう。そして、ケース越しにじっと眺めるのだった。
なんでそんなもん持ってるのかって?そりゃお前、出先でこういうことがあった時用に決まってるだろう。
「そういえば」
女性の先輩がスクッと立ち上がる。
「まだ自己紹介をしてなかった。私の名前は
「僕もまだだったね。
2人.....咲月先輩と実先輩は、そういってぺこりとお辞儀をした。なんだ、変な人たちだと思ってたけど、ちゃんとしてるんじゃんか。
「あ、ご丁寧にどうも.....俺は」
俺も自己紹介しようとした時、先輩方が先に口を開いた。
「
「趣味は読書、音楽、ゲーム、そしてケモっ娘フレンズの収集。公式イベント、同人イベントにもちょくちょく顔を出してると。」
「なんで知ってんだよ!?なんなのこの人達!?」
「さぁ、なんででしょうね。同人サークル『ケモっ娘隊』の副隊長さん?」
怖い!!どっかおかしいよこの人たち!!もうやだうわあぁぁん!!
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