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「あの、結局ここはどういう部活動なんです?学園祭でも聞いたこと無かったし、パンフレットにも載ってなかったと思うんですけど.....」
縄を解かれながら、咲月先輩と実先輩にそう問いかける。
俺はこの学校を受験するにあたり、下見を兼ねて去年開催された学園祭に一般参加していた。部活動も見て回ったはずだが、文化部なんて聞いたことがなかったのだ。
それだけでなく、入学後に貰ったパンフレットに部活動の一覧が載っていたのだが、そこにも文化部という名前はなかった記憶がある。
「だろうね、学園祭のときは閉め切ってたし。」
咲月先輩はさも当たり前かのように言う。部活動をアピールする絶好の場だし、人数の少ない部活動なら、そんなことする理由がわからない。
「閉め切ってた?そりゃなんでまた。」
「この部屋、この部活には、僕たちが認めた人しか入れないって決めてるんだ。」
「変な人が興味本位で入ってくるのは嫌だから、そっちが選ぶんじゃなくて、私たちが選ぶ方式にした。」
「はぁ、そうですか。で、パンフレットに載ってなかったのは?あれ、文芸部も全部載ってたはずなんですけど。」
そういうと、実先輩は苦笑いしながら言った。
「あはは.....実は僕ら、本当は部活動なんて入ってないんだよね。」
「.....?すみません、言ってる意味がよくわからないのですが.....」
「簡単に言うとだね」
咲月先輩が腰に手を当て、まるで自慢するかのように言った。
「文化部は、部活動として正式に認められてる訳じゃないってこと。非公式、ノンオフィシャル。」
「.....待ってください、つまり俺は?」
震えながらそういうと、実先輩がニコッと笑いながら言った。
「公式的には部活動なし、帰宅部だね。」
それを聞き、俺は床に手をついて愕然とする。
グッバイ、俺の青春。仲のいい友達を作って、部活動で活躍して.....なんていう甘い夢は、簡単に消え去った。
いや待て、まだ慌てるような時間じゃない。兼部として、他の部活に入れば.....
「わかってると思うけど、兼部はダメだからね。」
「なんでだよ!?部活動じゃないのに一丁前に!!」
俺は思わずツッコんだ。
「む、失敬な。うちはれっきとした部活動だよ。ただ非公式ってなだけ。」
「その非公式がネックなんですよ!」
俺は頭を抱えた。
「あー.....その、部活動として非公式ってことは、この教室も勝手に使ってるんですか?結構私物っぽいものがありますけど.....」
そういって、当たりを見渡す。ソファ、ゲーム、漫画、ラノベ、パソコン.....ほかにも学校には似つかわしくないものが様々置かれていた。
「あぁいや、この教室を使うことは許可取ってるんだよ。元々使ってない物置みたいな教室だったから、掃除する見返りに使わせてもらってるんだ。」
「つまり私たちは、公認の非公式ってこと。本人公認のお笑い芸人って感じ。おわかり?」
咲月先輩は何故か得意げにそういい、実先輩が苦笑いしていた。
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