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「そういうわけだから、安心して部活動に励んでくれたまえよ。」
「何がそういうわけなんですか.....励めと言われても、わけわからなさ過ぎて、イマイチ気合いが入らないんですけど。」
「おや、こんなところにケモっ娘フレンズのステッカーが。」
「うっす、全力で頑張ります。」
「うむ、その意気だぞ新入り。」
こうして俺は、2人の先輩の下僕.....否、文化部の一員となった。正直ツッコミどころしかなくて不安しかないが、なるようになるだろうと高を括ることにした。言葉を選ばずに言うと、考えることを放棄した。
「じゃあ、今日の放課後、またここに来るように!以上、解散!」
咲月先輩の号令で、部活動の朝練が終了し.....朝練?でいいのか?まぁいいや、細かいことは気にしない方が、人生楽しいもんだ。
「あ、ちなみに」
教室を出たタイミングで、実先輩が振り返って笑顔で言った。
「あと1分でホームルームの時間だから、急がないと間に合わないよ!」
「え?」
この日、俺は入学して初めて、ホームルームに遅刻する羽目になったのだった。
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「くっそ.....先輩2人は空き教室の真隣とか.....理不尽だ.....」
放課後、部室へ向かいながら、俺はまだ朝のことを引きずっていた。1年生の教室は4階、部室は1階奥。階段まで遠いし、ホームルームまで1分とか、間に合うわけが無い。
しかも、遅れた理由に「部活動の朝練」とい
う言葉が使えないのが、結構痛かった。表面上は部活動に入っていないし、家から学校までは歩きで行ける距離だから、電車の遅延も使えない。
俺は溜息をつきながら、部室の扉を開ける。先輩2人は既に来ており、本を読んでいた。
「来たね、少し遅いぞ。」
「勘弁してくださいよ、4階から降りてくるの結構大変なんすよ?」
「大丈夫?朝遅刻しなかった?」
「しました、しましたよえぇ。朝ギリギリまでやるとか、今もうどの部活でもやってませんよ!?」
「じゃあうちが唯一無二だ!」
「褒めてねぇ!嬉しがるな!」
俺は部室の中でため息をついた。初日からこの調子で、俺はもつのだろうか。胃薬とか準備しといた方がいいかもしれない。
「さて、メンバーも揃ったことだし.....始めようか、部活動。」
咲月先輩の合図で、実先輩が立ち上がる。なんの説明設けてないのでよく分からないが、とりあえず俺も立ち上がった。
そして唐突に、2人はポーズを取りだした。
「誰が呼んだか学校の恥!」
「それもそのはず我ら非公式!」
「エンターテインメント、ここに極まれり!」
「何でもござれの多芸な我ら!」
「「名を、文化部と申す!」」
.....胃薬の出番は早々に来そうだ。ダサい決めポーズと口上を決め、ドヤ顔の二人を見ながら、そう思う俺なのだった。
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