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「.....ほらほら新入り君、君も突っ立ってないで、なにかポーズを取る。」
「そうだよ渉くん!ほら、決めポーズ!」
え、嫌です。と、口から滑り出そうになるのを抑え、俺は少し考えた後に、無難に2人をひきたてるポーズを取った。一番端でシャラシャラ~ってやる、アレを。
俺の対応に、2人はご満悦。俺は真顔で、今朝をなかったことに出来るすべがないか、本気で考えていた。
「で、この戦隊モノの口上のようなやつはなんなんですか?」
「何って、うちの部活動名物、名乗りだよ。」
「いやそんな、さも当たり前みたいに言われても、知らないんですけど。」
「ほら、部活動紹介とかでさ、うちは〇〇部です、普段の活動は~ってのあるでしょ?あれ真面目すぎるからさ、もっと面白くできないかなって2人で考えてさ。」
「いつか正式に部活動として認められた時に、いつでも使えるように、毎回練習してる。」
「あぁ、さいですか.....」
ツッコミどころ満載だが、あえて何も言わなかった。正式な部活動になることは無さそうだし、2人が楽しそうなら、それでいっかぁ。となったのだ。ツッコむの疲れるし。
「セリフも、3人バージョンを考えておく」
「いやいいです、自分はこのポジションで結構ですから。」
俺は即座に断るが、咲月先輩はすでに聞いちゃいなかった。鼻歌混じりにノートに書いていた。本当にやめて欲しい、あんなポーズ取りたくないぞ!!
「はぁ、それで?今日の活動内容って何ですか?ボランティアとか?」
俺がそうく聞くと、2人は顔を見合せ、首を横に振った。....え、首を横に振った?
「いや、なにも?」
「な、なにも!?」
俺は目を見開いた。
「文化部のモットーは、短き高校生活をめいっぱい楽しむことだからね。今はまだ依頼も無かったし、ただ部屋で過ごすだけかな。」
「依頼?」
「非公式ながら部活動を続けるのに、学校で困ったことや手を借りたいことを手伝うってことをしてる。月に1~2件ってところだけど。」
思ったよりもちゃんとしてるんだな、というのが先輩達の話を聞いていて思ったこと。何もしないというのには驚いたが、学校の役に立ってるなら、まぁ.....。
「そんなわけだから、はい。」
咲月先輩がドカッと紙の束を机に置いた。
「なんです?その紙の束は。」
「何って、原稿用の紙。」
「.....原稿?」
「今度の小説大賞に応募するための原稿。」
「はあ、先輩がですか。まあお二人とも小説書かれてましたもんね。」
実際、俺がここに入部させられたのも、先輩たちの小説が原因だし。まあ、いい時間つぶしにはなるだろう。さて、俺は何を.....
「いや、君も書くんだよ。」
「.....はっ!?聞いてませんけど!?」
「そりゃ今初めて言ったからね。」
俺は咲月先輩の突拍子もない話に驚き、実先輩の背に隠れる。
「嫌ですよ!俺書けませんもん!実先輩からもなんか言ってくださいよ!」
「え!?あ~.....」
実先輩は頬を搔いて、俺の肩に手を置いた。そしてにこっと微笑んで.....
「一緒にがんばろうね♪」
「しまったこいつも敵だった!!」
俺は抵抗したものの、意地悪な先輩2人に部屋の隅に追いやられ、泣く泣く了承する他なかったのだった。
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