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「......なんで置いていったの」
「いやあの」
「ねえ、どうしてなのかな、かな。」
「やめてその某ひぐらし!表情も相まって怖いから!」
放課後、部室の扉を開けると、先輩2人がハイライトのない目で、こちらを見てきた。怖くなって逃げだそうとしたところ、先回りされて壁に詰め寄られ、今に至る。
どうもあの後、2人はちゃんとHRに遅れたらしい。ざまあみろ、初日の復讐じゃ!と言いたかったが、そんなことが言える雰囲気ではなかった。
「先に行くにしてもさ、一声かけるかとかあるよね。なんで黙って行っちゃったのかな。」
「い、いやあ......先輩たちなら大丈夫かなあって思いまして。なんだかんだ間に合うんじゃないかな~......と。」
「で、間に合わなかったわけだけどさ。この状況、どのようにお考えで?」
「ええっと、そのですね......」
実先輩の表情がいちいち怖い。今にも鉈とか出してきそうな雰囲気あるよ。マジでこの人ひぐらしいけるよ。そのレベルだよ。
と、いうかだ。俺はそろそろ我慢の限界なので、ずっと思ってたことを口にした。
「あの、そもそも遅れたのは先輩たちの責任でしょう。人のアルバム見てぐへぐへいって、周り全然見えてなかったじゃないですか。」
「うぐっ」
「それに、実先輩?人に怒る前に、自分の非を謝るべきでは?声をかけなかったのは悪いですけど、それを人のせいにするのはどうかと思いますよ。」
「ぐふっ」
咲月先輩と実先輩は、それぞれダメージを受けて床に崩れ落ちる。
「い、いや......こんなアルバムを見せてくる君が悪いね。あんなの見せられたら絶対時間の感覚なくなるって。」
「そ、そうだそうだ!見せてくるほうが悪い!あんなの、周りが見えなくなることくらいわかるでしょ!」
変な方向から逆切れしてきた。俺はため息をついて、2人の頭に手を置く。
「俺は見ていいって許可を出しただけです。読んで字のごとく、水を得た魚のように食い入るように見てたのはお2人でしょ?なら自己責任ってやつですよ。」
「いやでも―」
「だから―」
「はいはい黙りましょうね~」
そのまま、2人の頭をなでる。有無を言わせなくする戦法だ。
「「はうあっ!?」」
2人して驚きの声を上げたかと思うと、そのすぐ後には、ふにゃふにゃの顔で気持ちよさそうになでられていた。まるでまわりにお花畑でも出ているかのような、「わふ~」という効果音というか声が似合いそうな、そんな雰囲気だ。てかほんとうに2人とも、「わふ~」って言ってるし。
この戦法はしばらく使えそうだぞ、と、思わぬところでひとつ武器を得た俺なのだった。
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