☆☆☆
次の日の朝、俺は2日ぶりに1人で登校していた。先輩達はなにやら準備があるからと、一足先に学校へ向かったらしい。
朝起きた時に母親からその事を聞いた。どうやら、メッセージアプリでやり取りしてるらしい。なんで?と思ったが、あえて突っ込まなかった。朝から要らんエネルギー消費をしたくないからな。
1人で歩く登校道は、静かではあれど、爽やかな風が吹いてとても心地よい。周りがいつも騒がしいから、俺はこういう時間が大切だと思ってるし、とても好きだ。
「……そういや準備ってなんなんだろうな。」
ふとそんな事が頭に浮かんだが、すぐに考えるのをやめた。部室に行けばわかる事だし、今はこの時間を楽しみたい。
俺は終始穏やかな気持ちで、この日登校した。
☆☆☆
「……」
「わうん!」
「はっはっはっ……」
俺はつい先程開けた部室の扉を閉め、頭を抱える。さっきまで穏やかだった俺の心から、ピシッと亀裂が入る音がした。こうなることがわかっていれば、投稿時に身構えていたのに、不意打ちをもろに食らってしまった。
その結果が、絶句からの遮断である。宇宙猫状態になったのは言うまでもない。自分の目が、脳が信じられなかった。これは果たして現実なんでしょうか。夢であって欲しい。
とりあえず、状況を説明しよう。数秒前、俺が扉を開けた時に目の前に広がっていた光景。それは……犬の格好をした先輩たちだった。
犬の耳、尻尾、ご丁寧に首輪までつけて、こっちを見て鳴き真似したり、舌を出してハッハッとか言ってたり……。
言ってる意味がわからない?俺もわかんねぇよ。わかってたまるかこんなの。誰か説明してくれよ、なぁ!
「ほんとおかしいよ、この先輩達……」
俺は項垂れながら、そう呟いた。驚くことなかれ、これでまだ入部から1週間経ってないからな。
俺は諦めて、ゆっくりと部室の扉を開ける。先程と変わらぬ表情、仕草の先輩達が、そこにはいた。
今度は部室の中にちゃんと入ったあとで、部室の扉を閉める。さすがに先輩達のこの姿を、他の人には見られたくなかった。というより、この姿の先輩たちと俺が一緒にいるいる姿を、他の人に見られたくなかった。
「……お手」
何気なく、そう言って手を出してみる。先輩達は目をキラキラさせ、「わんっ!」という元気いっぱいな声とともに、お手をしてきた。
わー、芸達者だねーすごいねー……はぁ。
「何やってんすかほんと……どうして犬になってんですか。」
俺は2人のことをジト目で見つつ、そういった。
☆☆☆