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第18話 覚えちまった快感に

☆☆☆


次の日の朝、俺は2日ぶりに1人で登校していた。先輩達はなにやら準備があるからと、一足先に学校へ向かったらしい。


朝起きた時に母親からその事を聞いた。どうやら、メッセージアプリでやり取りしてるらしい。なんで?と思ったが、あえて突っ込まなかった。朝から要らんエネルギー消費をしたくないからな。


1人で歩く登校道は、静かではあれど、爽やかな風が吹いてとても心地よい。周りがいつも騒がしいから、俺はこういう時間が大切だと思ってるし、とても好きだ。


「……そういや準備ってなんなんだろうな。」


ふとそんな事が頭に浮かんだが、すぐに考えるのをやめた。部室に行けばわかる事だし、今はこの時間を楽しみたい。


俺は終始穏やかな気持ちで、この日登校した。


☆☆☆


「……」


「わうん!」


「はっはっはっ……」


俺はつい先程開けた部室の扉を閉め、頭を抱える。さっきまで穏やかだった俺の心から、ピシッと亀裂が入る音がした。こうなることがわかっていれば、投稿時に身構えていたのに、不意打ちをもろに食らってしまった。


その結果が、絶句からの遮断である。宇宙猫状態になったのは言うまでもない。自分の目が、脳が信じられなかった。これは果たして現実なんでしょうか。夢であって欲しい。


とりあえず、状況を説明しよう。数秒前、俺が扉を開けた時に目の前に広がっていた光景。それは……犬の格好をした先輩たちだった。


犬の耳、尻尾、ご丁寧に首輪までつけて、こっちを見て鳴き真似したり、舌を出してハッハッとか言ってたり……。


言ってる意味がわからない?俺もわかんねぇよ。わかってたまるかこんなの。誰か説明してくれよ、なぁ!


「ほんとおかしいよ、この先輩達……」


俺は項垂れながら、そう呟いた。驚くことなかれ、これでまだ入部から1週間経ってないからな。


俺は諦めて、ゆっくりと部室の扉を開ける。先程と変わらぬ表情、仕草の先輩達が、そこにはいた。


今度は部室の中にちゃんと入ったあとで、部室の扉を閉める。さすがに先輩達のこの姿を、他の人には見られたくなかった。というより、この姿の先輩たちと俺が一緒にいるいる姿を、他の人に見られたくなかった。


「……お手」


何気なく、そう言って手を出してみる。先輩達は目をキラキラさせ、「わんっ!」という元気いっぱいな声とともに、お手をしてきた。


わー、芸達者だねーすごいねー……はぁ。


「何やってんすかほんと……どうして犬になってんですか。」


俺は2人のことをジト目で見つつ、そういった。


☆☆☆

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