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「わんっ!わんっ!」
「あーはいはい、よーしよしよし……」
「くぅーん……」
「はいはい今撫でてあげますから……」
右に左にと、大忙しで2人……2匹?の世話をする俺。この状況、なんでこうなったのかまじで誰か説明してくれよ。まさか人と犬が融合したとか、そんなときめきファンタジーなことが起きたとか言うまいな?フィクションじゃあるまいし。
俺はいい加減我慢の限界が来て、2人をおすわりさせて、話を聞くことにした。
「そろそろ話してくださいよ。なんで犬の格好して、犬の真似してんですか。」
「あのね、この格好してたら、渉くんが合法的に撫でてくれるって気づいたの!」
「ナイスアイデアってことで、早速ド〇キでコスプレ一式揃えたって訳。さぁ、存分に撫でておくれ。顎下でも頭でも、耳でも良いぞ。」
「帰っていいすか」
俺は呆れて、ため息混じりにそういった。
「おや、学校をサボるのかい。学業を疎かにするとは、いただけないね。」
「そうさせてるのは誰のせいだと?」
「疲れてるのかな?それなら、僕たちが癒してあげるよ!」
そういって、こてんと床に寝転がる実先輩。カーペットの上とはいえ、学校の床に寝転がるのはどうかと思う。
「はい渉くん、床に座って、僕に向かって手を伸ばして!」
「……なんか嫌な予感がするんですけど」
俺はしぶしぶ、実先輩の言葉に従う。
「わ、おっきぃ手。男の子だもんね~……よっと。」
「あんたも男だろ……って!?」
何を思ったのか、実先輩は俺の手を自分のお腹におもむろに置いた。すごいすべすべ、女の子みたいな肌……って言ってる場合か!
「ちょちょちょ、やめてくださいよ実先輩!」
「そう言いながらずっと触ってるくせに~」
「あんた力強いんだよ!くっそ、離れようとしてもビクともしない……!」
馬鹿力で押さえつけられ、俺の手は実先輩のお腹から離れられなかった。傍から見るとイヤイヤ言いながらずっと撫でてる人みたいに見えるから、ほんとうにタチが悪い。
というかちょっと待て、さっきからカシャカシャ写真を撮る音が聞こえる。咲月先輩の方をむくと、さっと何かをしまってぷいっとそっぽを向いた。
「おい待て何を隠した。」
「なーにも」
「嘘つくな、スマホかカメラだろ。消して、消してください。」
「なんのことか分からないなー、犬だからなー。別に現像して飾ろうなんて思ってないよー。」
スマホをヒラヒラさせながら、そんなことを言いやがった。
「それだけはガチでやめて!?俺の尊厳が死ぬ!」
そういって、スマホを取り上げようと動くと
「んっ...///もう、おませさんなんだから。」
「誤解を招く言い方はやめてね!!!」
実先輩に伸びる手が動いて刺激してしまうという悪循環。俺は動けない状態になった。
羨ましいと思うなら代わってくれ、当事者は地獄だぞ。
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