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それから暫く、先輩2人に振り回された俺は、朝から元気エネルギーが空っぽになっていた。机に突っ伏し、ぐでーんと伸びている。
「つっかれた……まだ朝だぞ……これから授業とか地獄かよ……」
俺がボヤいていると、まだ犬の格好をしている2人が頭を撫でてきた。
「お疲れ様だね~」
「誰のせいだと……はぁ、もういいです。とりあえず着替えたらどうですか。そろそろHRの時間でしょう?」
「む、もうそんな時間。たしかにそろそろ着替えないと。今日はちゃんと忠告できたな、偉いぞ。」
そんなことを言いながら撫でてくる、咲月先輩。俺は同じミスはしない主義なんでね。
「僕はお手洗いで着替えてくるから、ここ使っていいよ。」
「わかった」
そういって、先に実先輩が部室を出ていく。次いで俺も立ち上がる。
「じゃあ、俺は先に教室行きますから、戸締りよろしくお願い─」
「ちょっと待った、どこへ行くつもりだい。」
何故か遮られた。
「どこって、いまさっき言ったじゃないですか。教室に行くって。」
「違う違う、そういう事じゃないのだよ、ワトソンくん。」
「誰がワトソンくんだ。……いやほんとに誰?」
「え、このネタ通じないの?」
「ネタ?これなんかのネタなんすか?」
俺が単純な疑問を投げかけると、咲月先輩はどこか遠い目をして、「これがジェネレーションギャップか……」とぼやいていた。
いや、そんなことより。そろそろ着替えないと本格的に間に合わないのでは?また俺のせいにされちゃ嫌なんだけど。
「なんの事か知りませんけど、とりあえず俺は先行きますから、先輩もすぐ着替えて教室行った方がいいですよ。それじゃ、また放課後に─」
ドアに手をかけたところで、咲月先輩に腕を掴まれた。
「もー、だからなんすか?」
「察しが悪いな、君は。この状況をなんとも思わないのかい?」
「この状況ぉ?」
俺は、改めて周りを見渡す。普通の教室に、教室に似つかわしくないものがあふれ、目の前にはコスプレした先輩がいる。
「うーん、カオスってことしかわかんないッスね。」
「そうじゃなくてだな……あぁもう、私が言うのもどうなんだこれ。もう少し察しておくれよ。」
咲月先輩は何かボヤきながら、俺の目を見て言った。
「女の先輩が、着替えるって言ってるんだぞ。残るだろ、覗くだろ、普通。」
「残んねぇし覗かねぇよ普通は!?」
もう色々とダメだった。この人の普通は、いわゆる普通じゃない。「逸」般人目線での普通の尺度が、一般人のそれと同じはずがなかったのだ。
どうやらまだ神様は、俺のことを困らせたいようだ。いい加減泣くぞ。
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