今、僕の目の前に好きな子がいる。
しかも、ここは学校の屋上で、誰もいない放課後だ。そして昼休みに、その好きな男子に「放課後、学校の屋上で待ってるから」とも言われた。
もう、ここまで来たら、アレしかない。自分は今、青春のど真ん中にいる。そう、高校二年生だからだ。
これくらいの年になると、早い者はカップルになってデートしてみたり、そりゃ、キスだってしている頃だろう。
だが僕の場合、好きになる対象っていうのが男子なもんだから、顔のわりには恋人がいたことがない。
そして今、僕は自分が初めて好きになった男子に呼び出されて、ここにいる。
人生の中で、今が一番、鼓動の高鳴りが最高潮だ。
ここまで来たのだから、告白に決まっている。緊張で生唾を飲み込んでしまう僕。
本当に、僕の目の前には、こう、色っぽく見上げてくる君がいる。僕の肩に腕を回して、背伸びまでしてきて――
「僕さ……」
と、次の瞬間には、その子は顔を俯けてしまっていた。きっと君は、顔を赤くさせているのであろう。見えなくても十分に分かるから。
その子が顔を俯けて数秒……その時が、僕からすると長く感じられる。そして、小さな声ではあったのだけど、
「僕……涼のことが好き……」
……やっーぱり!!
心の中では、天使たちがファンファーレを鳴らしてお祝いをしてくれていた。そして僕の方は、心の中で、もちろんガッツポーズだ。だが、次の瞬間、君は顔を俯けながら、肩を震わせてしまっている姿が見えてくる。
そこに首を傾げる僕。
だって、なんで肩を震わせているのかが分からないからだ。
……泣いてるの?
だって僕は、まだ告白の答えを言ってないよ。むしろ僕からしてみたら、君からの告白っていうのは嬉しいもんだから、即答できるんだけどな。
「え? あ、ねぇ、大丈夫?」
僕の方は、その好きな男子の両肩に手を置いて、心配そうな表情で見つめる。そして急に、その子が僕に唇を重ねてきた。
さらに高鳴る僕の鼓動。
唇を重ねるっていうのは、こうも温かくて、甘い。
よく、ファーストキスっていうのはレモンの味とか、いちごミルクの味とか言うけど、要は甘いっていうことを言いたいのかもしれない。そりゃ、好きな人とするキスなのだから、甘いに決まっているのではないだろうか。
だが、ホント甘い刻というのは、すぐに時間が過ぎてしまうもんだ。再び俯けて肩を震わせてしまう君。そして次の瞬間には、とんでもないことを口にしてくる。
「……これで、罰ゲーム終了でいいんだよね?」
……はぁ!?