「あのさ……僕をここに呼んだ理由って、何?」
そう言って七海君は笑顔で、もう一度僕のことを見上げてきた。
「……へ? あ、ああ……」
その七海君の言葉で、僕は今日この時間に彼を呼び出した理由を思い出す。そして視線を宙に浮かせながら、後頭部を掻いて言葉を探した。
「あ、いや……あのさ……」
僕の胸の鼓動が、いつも以上に波打っている。もしかしたら、声が震えて、うまく言葉になっていないかもしれない。
とりあえず、深呼吸。自分を落ち着かせるために、深く息を吸って、吐き出す。一瞬だけど、少しだけ気持ちが落ち着いた。けれど、それでも鼓動は早いままだ。
それでも今、七海君は目の前にいる。なら、言うしかない。
僕はそう心の中で決意して、真剣な瞳で七海君のことを見つめた――つもりだったけど、
「七海君……僕は君のことを……一年生の時から、好きに……なっちゃって……だから」
気づけば僕の視線は宙に浮いていた。
テレビドラマの俳優さんみたいに、真剣な瞳で相手を見つめて告白――なんて、僕には無理だった。そして、告白の言葉も続けられない。あんなに考えた言葉たちも、いざとなると出てこない。
再び、僕たちの間に沈黙が流れる。
本当は、僕の方からちゃんと続きを言わなきゃいけないんだろう。でも、頭が真っ白になってしまって、言葉を繋げられなかった。
「涼……?」
七海君に名前を呼ばれただけで、僕の鼓動はさらに激しくなる。そして、真剣な表情で僕のことを見つめてくる七海君。
……へ? なんで!? 七海君がそんな目で? え? まさか、また罰ゲームってことは……ないよね?
一度疑ってしまった僕は、反射的に辺りを見回してしまう。でも、そんな気配はなかった。それに、安心した。
「涼……僕も、本当は涼のことが好きだったんだ」
その瞬間、僕の心の中で、天使たちがファンファーレを奏でた。
「確かに前回の告白は罰ゲームだったけど……僕からしてみたら、キスは罰ゲームじゃなかったって言ったら?」
「……はぁ!?」
思わず声が出てしまうのも無理はなかった。まさか、そんなこと、思ってもみなかったからだ。
「それに、好きじゃない相手とキスなんて、できると思う?」
――あー! そう言われてみれば、そうだ。僕が考えていたことは、間違ってなかったのかもしれない。
これは現実? 夢? ……いや、現実なんだよね? 僕は心の中で、何度も確認していた。
「じゃあ……」
「うん、そう!」
「付き合ってくれるの?」
「そういうことだよ」
その言葉を聞いて、今度は僕の方から七海君へと唇を重ねた。
最初に七海君からされたキスと同じくらい――いや、それ以上に、甘く感じる。今は、お互いに好き同士なんだから、当然かもしれない。
最初、僕たちは七海君の罰ゲームから始まった。だけど、最終的には、お互いの気持ちが通じ合って、初恋が実ったんだ。
これから、僕たちは恋愛という名の青春を、一緒に歩んでいく。