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第4話

 七海君からの悪戯での告白から、約一ヶ月後。


 僕はこの一ヶ月間、いろいろなものを調べたり、少女漫画やネットを見て総合的に考えた結果、あの時に考えていたことは僕の勘違いではなかったような気がしてきた。だから今度は、本気で僕が七海君に告白する覚悟を決めた。


 あの時とは違い、誰もいない屋上に、僕は憧れの七海君を呼び出してみた。


 屋上のフェンスの向こうに見えるのは、部活動で頑張る生徒たちの姿。高校時代っていうのは、本当にいろんなことが「青春」なんだろう。そうやって自分の好きなことに打ち込める時でもあるんだから。高校時代になると、自分が好きなことが分かってくる。だから大学に向けて進路を固めていく時期でもある。


 僕はフェンスの向こうに見える生徒たちを見つめる。


 七海君に告げた時間は「十六時に屋上」。


 昼休みに、七海君の机の中に手紙を入れておいた。まず、それを見てくれているかさえ分からない。もちろん、十六時にこの場所に来てくれるかどうかも、今は分からない状態だ。


 僕は校庭に見える時計を見上げながら、顔を俯け、フェンスを握りしめる。


 今の時刻は十六時。


 ……やっぱり七海君は来てくれなかったようだ。これで、僕の青春というのは終わった。


 七海君は僕の手紙にさえ気づいてくれなかったのだろう。まぁ、一ヶ月前と結果は同じだったってことだ。


 そう思って諦めて、気持ちを吹っ切って次の恋を見つけようと、屋上にある扉に手をかけた――その直前。

 急に、屋上に通じる扉が開かれた。


 そこには、息を切らした七海君が立っていた。


「……へ? 七海君!?」


 僕は思わず目を丸くして、七海君の目を見つめる。その一瞬、目が合っただけでも、僕の鼓動は高鳴り始めていた。


「あ……」


 その一言をつぶやくと、七海君は僕のことを見上げてくる。


 一瞬の沈黙の後、


「あ、ごめん……」


 そう言って、七海君は僕から視線を外して言った。


 ……ごめん。ってことは、やっぱり、そうだよね。


 ……まぁ、初恋って実らないって言うし、そもそも男同士で恋人になる確率なんて低いわけだし。

 恋愛ドラマや少女漫画の世界も、あくまで男女カップルの話であって、男同士の恋愛には当てはまらないってことなんだろう。


 そう思った、その時。


 七海君は急に僕のことを見上げて言った。


「約束の時間に遅れて来て、ごめん……」


 ……へ? ど、どういうこと!?


 むしろ、僕の方がパニック状態だ。


 ……あ、「約束の時間に来られなくてごめん」っていう意味……なんだよね?


 僕は、自分の心に問いかけて確認してしまったくらいだった。

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