そんな七海君を、僕は一年生の頃から見ていた。
七海君は、クラスではムードメーカー的な存在でもある。
そして体育では運動神経抜群なのか、球技から何までこなすくらいだ。そんな七海君とは正反対な僕。きっと僕は、そんな七海君に憧れていたのかもしれない。
最初はただの憧れで七海君のことを見ていた。それがいつの間にか、僕は彼の姿を目で追ってしまっていたのだ。それを繰り返しているうちに、僕の胸の鼓動が早く波打ち始める。それが恋だと知ったのは、つい最近。きっかけは、たまたま見ていた恋愛ドラマだった。恋をするとは、まさに僕が七海君のことを追っていて胸の鼓動が早くなるということを、そのドラマでは言っていた。
今まで胸の高鳴りを知らなかった僕。最初は「病気かな?」って思って心配していたけど、そんな時にドラマを見て知った。
だけど今回、七海君が僕に罰ゲームで告白してきたことで、七海君の本当の気持ちっていうのが分かった。そう、全くもって七海君は僕には興味がないということだ。
完全に、僕の青春っていうのは終わったようにも思える……。
……いや、待てよ。
よくよく今回あったことを考えてみよう。
確かに七海君たちは、罰ゲームで僕に告白してきたと言っていた。だけど、キスっていうのは、例え罰ゲームでも男同士でできるもんなのだろうか? 確かに、罰ゲームで告白はできるのかもしれないけど、キスは……? そのあたりは分からないけど、流石にキスまでは罰ゲームでもできないような気がする。
それに七海君は、僕とキスをした後にすぐ服の袖で唇を拭うってことをしなかったようにも思えるし、気持ち悪そうな素振りも見せなかったようにも思える。流石に七海君たちが屋上を去ってからの行動っていうのは分からないのだけど、フツー男にキスした場合、気持ち悪くてすぐにでも服の袖で唇を拭うっていう行動をするはずなのに、少なくとも僕の前では七海君はしなかった。
そう考えると、例えさっきのことが罰ゲームで、七海君が僕に告白してキスをしてきたのだとしても、もしかしたら――七海君も僕のことを好きなのかもしれない。