数ヶ月後、健と美咲は都市部で平穏な生活を送っていた
しかし、あの村での体験は二人の心に深い傷を残していた
警察の捜査により、白峰里がプロの暗殺集団の拠点だったことが明らかになった
源蔵をはじめとする暗殺者たちは逮捕されたが
悪徳政治家として多くの人々に恨まれていた橋本議員一家の殺害は既に完了していた
調査の結果・・・
橋本清は長年にわたって汚職や賄賂、政治資金の私的流用を繰り返しており
その被害者たちが暗殺集団に多額の報酬を支払って復讐を依頼していたことが判明した
「結局、なぜ警察が来たんでしょうね」
美咲がある日尋ねた
健は首を振った
「わからない。でも、あのタイミングで来なければ、僕たちは全員殺されていた」
実は、警察が村に向かったのには理由があった
橋本議員の秘書が、議員が予定よりも長期間連絡を取れないことを不審に思い、警察に相談していたのだ
そして議員が最後に向かった場所が白峰里だったため、警察が調査に向かったのだった
しかし、健と美咲には別の疑問があった
「あの化け物...本当に全部が演技だったのかしら」
美咲が不安そうに呟いた
健も同じことを考えていた
確かに組織の仲間だった「化け物」もいたが
最初に現れたあの異形の存在は、他とは明らかに違っていた
あの超人的な力、あの不気味な雰囲気
本当に人間が演技でできるものだったのだろうか
「もしかしたら・・・」
健は恐る恐る口にした
「あの『祠』には、本当に何かが封印されていたのかもしれない」
美咲は震えた
「まさか・・・」
「組織は偽の祠の話を作ったつもりだったけど、実際にはその場所に古い封印があった・・・そして慎一郎が壊したことで、本物の妖怪が・・・」
二人はそれ以上話すことを避けた
真実がどうであれ、彼らは生き延びたのだ
それで十分だった
しかし、時々夜中に目を覚ますことがある
窓の外から、あの不気味な笑い声が聞こえてくるような気がするのだ
そして鏡に映る自分の後ろに、あの長い髪の化け物が立っているような錯覚を覚えることもある
あの村での体験は、彼らの人生に永遠の影を落とした
人間の悪意の恐ろしさを知ったと同時に、この世には人智を超えた存在があることも実感した