一年後、健は一人で『白峰里』の跡地を訪れた
警察の捜査が終わり、村は再び無人となっていた
彼が訪れた理由は、あの『祠』を確認するためだった
本当にあそこに封印があったのか、それとも全てが人間の仕業だったのか
真実を知りたかった
山道を登り、ついに『祠』の場所にたどり着いた
しかし、そこにあったのは『祠』の残骸だけだった
慎一郎が破壊し、その後の混乱で完全に崩れ去っていた
「やはり...ただの石の塊だったのか」
健はそう思いかけた
しかし、『祠』の残骸の中に、妙なものを発見した
古い巻物のような物が、石の下から出てきたのだ
恐る恐るそれを手に取ると、古い文字で何かが書かれていた
読むことはできなかったが、明らかに呪文のような内容だった
そして最後に、読める文字があった
「封印・・・破りし者・・・死を招く・・・」
健の背筋に寒気が走った
やはり、あの『祠』には本当に何かが封印されていたのだ
そして慎一郎がそれを破ったことで、古の妖怪が蘇った
組織の人間たちは、自分たちが作り話だと思っていた『祠』の伝説を利用しようとした
しかし、皮肉にも、その伝説は真実だったのだ
健は急いでその場を離れた
巻物は持ち帰らず、そっと元の場所に戻しておいた
帰り道、健は振り返った
『祠』の跡地から、何か黒いものが立ち上っているのが見えた
煙のようでもあり、人影のようでもあった
そして風に乗って、あの不気味な笑い声が聞こえてきた
「まだ・・終わっていない・・・」
健は走った
必死に山道を駆け下り、二度と振り返らなかった
あの村の恐怖は、決して終わることはない
人間の悪意と古の妖怪が混じり合った悪夢は、今もあの山の奥で生き続けている
そして時々、深い霧の夜に、あの化け物が都市部まで、健と美咲の前に現れ
「お前たちは・・・逃げることはできない・・・」
その声が聞こえるたび、健と美咲は恐怖に震える
彼らはあの村から肉体的には脱出できたが、精神的にはまだあの場所に囚われているのだ
人間の悪意と超自然的な恐怖が組み合わさった時、それは最も恐ろしい悪夢となる
『白峰里』で起きた出来事は、まさにその典型だった
美しい風景の裏に隠された人間の醜さ
そして古から続く呪いの恐ろしさ
それらすべてが重なり合った時、真の恐怖が生まれるのだ
そして今でも、日本のどこかに同じような場所があるかもしれない
美しい観光地の仮面を被った、死の罠が待ち受ける場所が・・・・
<終わり>