小説の語り口には、ざっくり人称で三つ、実質は二つある……というのは、みなさんご存じのとおり。
自分語りの、一人称。
客観語りの、三人称。
〝あなた〟や〝きみ〟で語る二人称も……あるにはあるけれど。
書くのも読むのも高難度。 めったにお目にかかれないので、この際ないことにしときます。
さて、ここでタイトル回収するわけですが、苦手な小説、語り口の話。
一人称の語りで、突然視点が変わって、今まで読んでいた主人公以外の、〝誰か〟の語りに移ってしまう……これが、苦手。
残念。がっかり。
僕のワクワク返して……みたいになる。
そういうのは、最初から、三人称一元とかにしといて欲しい……。
たとえばね、こういう一人称視点の物語があるとしてよ――
主人公男子がヒロインと出会って、どうにかひとつ困難を乗り越える。
やっとひといきついたところへ……いきなり立ちはだかる敵対者。
しかも、そいつはどうやら、ヒロインとは浅からぬ縁があるらしい。
次々訪れる大ピンチを乗り越えたものの、ヒロインは浮かない顔。
さて、主人公男子はどうする?
この先どうなる?
敵対者との因縁ってなんだーっ?!
と、ワクワクしているところにさ。
一方そのころ――
「テキタイシャ様……なぜ、あのような」
「ふむ、かくかくしかじか、これこれあれこれ……」
「そ、それは、テキタイシャ様もさぞかし……」
じゃねえ! そうじゃあねえだろ、ナニこら全部ネタバレかましてんだよ、ふざけんな、ぶっとばすぞ、ページ破くぞ、おれのワクワク返しやがれ、はーはーはーふーふー……
てなるわけですよ。
なるでしょ?
ならないすか?
なるよなあ?
え?
ならねえだ?
おい、ちょっと表出ようか?
いやまて、落ち着け……
こういう構成の小説、たまによく見るんですよね。
特に、WEB小説で。
これ、擁護気味になぜそうしてしまうのかなあ……と妄想するのですが、映像や漫画で育った世代だからなのかなあって気がするんですよね。
いや、僕だって映像や漫画で育った世代ですけれども。
特にアニメ。
テレビアニメは基本、三人称の神視点で進みますから、いきなり見ず知らずの悪党が出てきて、しかも悪党陣営の本拠地なんかが映って……
バーン、ドッドッドッドッ……(SE)
「ついに、動き出したか……」
とかやってもまー、まだ許される。
むしろ先に見せとかないと、主人公「お前だれ?」てなって、視聴者側も、お口ポカーンになりかねない。
こういう演出に、書く側が慣れすぎてるのじゃないかなあ。
いや、読む側も慣れちゃってて、別にいーんじゃない?「一方そのころ、side B とか普通だし」っていうの、あるんだろうしね。
でもなあ、僕は無理なんですよねー。
小説は、読む側の期待の持ち方、感情移入の仕方ががだいぶ違いますから、そのへんの見せ方読ませ方、もうちょっと気を使っていただきたい……せめて自分は、そういうことのないようにしていきたい――
それだけの話です。
<おしまい>