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中立地帯のキング★メイカー ~魔導学院中退だけどソロなら世界最強です~
中立地帯のキング★メイカー ~魔導学院中退だけどソロなら世界最強です~
原雷火
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年05月27日
公開日
4.3万字
連載中
二国境間でにらみ合うレイライン聖王国とアーク魔帝国の軍団。 聖王国の秘密兵器として投入された大魔導師メイヤは、上官から極大破壊魔法で敵軍五十万人を焼き払えと命じられた。 「やなこった」 魔導学院中退の狂人は心の中で中指を立てる。 で、実際心に秘めるでもなく真正面から反抗期。 それでも放たれた極大破壊魔法が着弾した先とは―― 二つの国の中立地帯でスローライフを始める最強主人公のストーリー! ※小説家になろう にも掲載しています

1.戦争なんてやめちまえ

【本文】 

 人間が住まう国――レイライン聖王国。

 亜人魔族の住まう国――アーク魔帝国。

 二国間に広がる中央平原に、今、両軍総勢百万が集結した。


 レイライン側の本陣に、黒髪黒服の魔導師がいる。

 名はメイヤ・オウサー。

 聖王国の魔導学院(アカデミー)の植物魔法学科を中退。

 なんのかんのあって、前線に送り込まれた大魔導師様。


 それが私だ。


 幕僚集まる天幕で将軍様が憎々しげに私に言う。


「なぜお前みたいな奴に……いやいい。得意の戦術級極大破壊魔法で、敵軍を一掃してみせよ」


 私は心の中で中指を立てつつ返答した。


「バカか貴様は。そんなもん撃ち込んだら人が何人死ぬと思ってるんだ」


 将軍はぽかんとする。


「な、なんだその態度は! だいたいこれは戦争だぞ? 敵を殺すのがお前の使命ではないか?」

「うるせーばか。魔帝国の連中にだって家族はいるだろうが」

「中央平原を敵に抑えられれば聖王国存続の危機だというのがわからんのか?」

「……ったくよぉ」


 私の専攻は植物魔法なのだが、それ以外の才能に溢れて溢れて溢れすぎてしまっていた。

 だから戦場なんぞに引っ張り出されたのだ。


 まことに遺憾である。


 将軍が言う。


「いいか! もし敵軍五十万を灰燼に帰したなら、お前を復学させるどころか学院に研究室も建ててやるぞ!」

「撃てばいいんだよな?」

「ああそうだとも! さあ、魔帝国の連中に目に物を見せてやるがいい!」


 はぁ……だっる。

 こいつは一発ぶちかまさんといかんらしい。


 天幕を出て杖を手に身構える。

 呪文詠唱。えーと、黄昏よりもなんたらかんたら。


 指揮官たちが「全軍待避-!」と悲鳴をあげた。

 俺の前に布陣した聖王国軍が左右に割れる。


 海を割って人々を導いた予言者になった気分だわ。


「はいじゃあ撃ちますよ……っと」


 狙うは敵陣。アーク魔帝国の五十万の軍勢。


 一人殺せば犯罪者。五十万を殺せば英雄ってか。


 馬鹿らしい。


「顕現せよ破壊の光。我が敵を塵芥に滅せよ。極大破壊魔法ッ!!」


 杖の先端にはめられた宝玉が青白い光を放ち、熱線がアーク魔帝国の軍勢をなぎ払うように走った。


 次の瞬間――


 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!


 大気鳴動しすぎて地響きが起こる。


 青白い炎の巨壁が帝国側にそそり立った。


 王国軍の連中はぽかんと口を開けたままだ。


 天幕から出てきた幕僚どもが拍手する。


 将軍が俺の肩をポンと叩いた。


「よし、よくやったぞメイヤ・オウサー。お前の名は英雄として聖王国の歴史に刻まれることになるだろう」

「はあ? 死んだ後のことなんてどーでもいいんだが? 今を生きていることの方が大事でしょうがよ!」


 青い光の壁が収まる。対岸側の魔帝国軍は無傷で健在。


 ただし、平原中央に巨大なクレバスが出来上がった。橋でもかけるか、ごっそり迂回しなきゃならんくらいの断崖絶壁だ。


 将軍が敵軍を指さし吠える。


「おい! なんてことをしてくれた! 敵軍は無傷ではないか!」

「手前に着弾させたんだから当たり前でしょうに」

「お前の仕事は魔帝国軍に大打撃を与えることだぞ!」

「知るか」


 こんな危なっかしい魔法、人に向けて使っていいわけないでしょが。

 いや大地に向かってでも犯罪つーか。


 なんでこんなん使えるのか自分でもわからんけど。


 将軍が私の襟元に掴みかかった。


「もう一発撃て! 敵軍がひるんで逃げ出す前に」

「やなこった」

「なぜ力を持つ者がお前のような変人なのだ」

「俺はこの戦場で誰よりも常識人ですけどね」


 掴む腕を払いのける。ああもう、つきあってられん。


「上官に刃向かうか!?」

「やーめた」

「なに?」

「だから軍属やーめたっつってんでしょうがよ! 耳腐ってますか?」

「軍法会議にかけた上で死刑だぞ!!」


 かっちーん。将軍様は権力ぶんぶん丸だ。


「二言目には死刑だのなんだの。そんなに撃って欲しいんか?」

「撃って欲しいではない。撃つのがお前の責務だと言っている」

「だったらよぉ! 貴様のけつの穴にぶち込んでやろうか極大破壊魔法? ああぁん!? 痛いじゃすまねぇぞ!」

「な、なにっ!?」


 将軍の顔色が青くなる。

 私にしちゃ最後まで話を聞いてやったよな。けど、つーか、付き合ってられん。


 ギャルピース&ウィンクして将軍に告げる。


「最近、転移魔法覚えたんで。じゃお先。おつした~」


 その場から魔法で瞬間移動。

 適当な場所に飛んでさよならした。



「な、なんてことだ。都市一つ消滅させる極大破壊魔法の使い手が……瞬間移動まで使えるようになって逃亡だなんて」


 幕僚たちが青ざめる。補佐官が将軍に言う。


「もし、あの者が……メイヤ・オウサーがその気になれば……」

「聖王都が一夜にして消滅しかねん。ぐぬぬ! 神はなぜあのような狂人に力を与えたもうたのだ!!」


 ――時に聖歴2023年。


 類い希なる才能を持ち、国をも揺るがす力を持った大魔導師(魔導学院中退)は聖王国から出奔した。

 瞬間移動魔法の力に目覚めて……。


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