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乙女《バージン》ブレイド
乙女《バージン》ブレイド
兎姫
現代ファンタジースーパーヒーロー
2025年05月28日
公開日
1.2万字
連載中
<美処少女・武将化計画> 三国志や戦国時代にタイムスリップ!……ではなく、舞台は現代の日本国。 異世界転移や異世界転生など一切関係のない至って普通の世界。 ですが、現代の日本では美少女・美人さん(巨乳・貧乳の偉観を問わず)を限定対象にある病が蔓延していた。 その病とは……全員何かしらの『武将』になってしまうという奇病。 ある意味で『腐女子』『歴女』を拗らせたともいえるその病は急速に、そして着実に日本中に広まっていった。 「なぜ? どうしてそんなことに?」当然他の人もそう思ってしまうはずなのに主人公であるあなた以外は誰もそのことを疑問に思っていませんし、そもそも気付いてすらいなかったのです。 ですが彼女達と言葉を、そして縁《えにし》を交わすうちに、あなたはある共通点に気付きます。 その共通点とは……全員が全員『美処少女《バージン》(もとい純血種)』だったのです。 「ふ、ふん! どうせ私みたいな“処女”はモテないんだから、なら武将でもなんでもやってあげるわよっ!?」 そんな半ば自棄となりながらも、巧みなツンデレセリフを合言葉に同じ悩みを持つ妹属性・姉属性・幼馴染属性……などなど、すべてのヒロイン候補生にその病が蔓延していた。 この物語は美少女や美人さんなのに何故かモテない乙女《美処少女》達が武将となり、いつか自分だけの王子様《あなた》が現れるのを夢みる物語です。 1人のヒロインだけを愛するのもよし! 同時に複数人を愛するのもよし! はたまたベットヤクザの化身となって、全員を嫁にするハーレムもよし! すべてはあなたの思うがままに……。

第1話 戦国女学院へようこそ!

「ふふふふっ……今日こそ、この信長から授かりし刃を持って貴公を成敗してくれようぞ!」

「さぁ~て、それはどうですかね。何人なんぴとたりとも、過去の歴史に抗うことはできません。それに歴史は繰り返すものですからね。私のこの名刀、明智光秀の血潮にして差し上げますわよ」


 長く美しい黒髪を靡かせた微乳美少女の目の前には、どこか悲しげな目をしたこれまた巨乳で美人なお姉さんが立ち塞がっていた。

 互いに握る真剣は決して模造刀の類ではない。ともに数百年前に実在した武将達が残した分身とも言える名刀である。 


 そして名立たる名武将『織田信長』『明智光秀』の名を口にしている彼女達こそ、その武将達の末裔まつえいであった。

 だが何故彼女達が互いに刀を手に持ち、相対しているのだろうか?


 二人を見守る一人の男は一言たりとも発せずに、ただ生唾を飲んで事の成り行きを見守ることしかできない。


(ボクが一体何をしたって言うんだよ? 二人ともいきなり刀なんか抜いたりして試合だなんて……)


 その原因を語るには、数分前までときを遡らなければならない。


***


「ここが“あの”有名な私立戦国女学院なのか……。女子高なのに『戦国』って名前付けるのもどうなのかと思うけれども……」


 これから2年間通うことになるであろう巨大な校舎を前にして、白鷺秋人しらさぎあきとはそう呟いた。

 大きな門構えにはしっかりと『私立戦国女学院』と書かれており、彼の目的地がここであることを示していた。


「でも、ここって女子高なんだよな。それなのに“男”のボクが普通に入っても大丈夫なのかな?」


 彼は性別が男性にも関わらず、何故か女子だけが通える花の楽園の門を潜ろうとしていたのだ。

 通常ならば、女子高へ男子生徒が足を踏み入れるのは禁忌タブーなはずである。


 けれども彼の場合は違った。それ相応の理由があり、この女学園へと転入してきたのである。


「まさか遺産相続の条件がここに通って卒業することだなんて、あんまりすぎるだろ爺さん」


 先頃、彼の父方の祖父が病のため亡くなっていた。

 両親共々既に亡くしている身のため、孫である秋人がそのすべての財産を相続することになったのだが、それには一つだけ条件があったのだ。


『祖父が理事長として運営をしてきた私立戦国女学院へ通い、卒業すること』


 たったそれだけのことで数百億という莫大な遺産が彼の手元へ転がり込んでくるのである。

 だがそれも決して容易なことではない。なんせ彼は“男”であり、ここは女子しか通えない“女子高”なのだ。


 女子高に男子生徒が転入してくることはまず無いことだし、そもそも受け入れてくれるというのが異例なことである。

 また女子高ということは生徒全員が花盛りの女性ばかりであり、そこで2年間過ごすことは難易度と言ったら、もはや言葉にするのも甚だしい。


「お、お邪魔しま~す」


 秋人は意を決して、構内へと足を踏み入れた。

 本当なら案内役が彼を出迎える手筈だったのだが、誰も迎えに来なかったため彼は一人敷地内へ入るしかなかったのだ。


「そこのお前っ! 何ヤツかっ!? ここは由緒正しき戦国女学院であるぞ!!」

「あ……あ……」


 けれども数歩だけ歩いたその後、速攻で黒髪長い美少女に見つかってしまい、秋人は突然のことで何も言葉を発することができずにいた。


「……見たところ、貴公はこの学園の者ではないであろうに? 何故ここへ立ち入ってきた? まさか学園の平和を脅かそうとする不埒な輩ではあるまいな?」

「いや……ぼ、ボクは……今日からここに通う……ことになった……」


 秋人は最後消え去りそうな小声になりながらも、そう口にした。

 すると少女は何も言わず、秋人のほうへと向かい歩いてきた。


 カッカッカッ……。温かな風に長い黒髪を靡かせながら、その少女が彼の元へと歩んでくる。


「ふーむ。今日からここに通う、とな? 今、そう確かに申したな?」

「は、い……っ」


 少女はキスでもせなんばかり顔を近づけると、顎に手を当てながら食い入るように秋人のことを観察始めた。


(ちかいちかいちかいちかい……顔がすっっっっごく、近いから!!)


 互いの吐息どこか、心臓の音が聞こえそうなくらい二人は顔を近づけていた。


 秋人は男子にしては小柄であり、目の前の少女は秋人よりも一回り以上身長が高かった。

 上から見下ろされる形になっているのだが、何故か威圧感や恐怖心よりも綺麗な顔を近づけられ秋人はどこか恥ずかしさを覚えてしまう。


「ぅぅっ(照)」

「……なるほど。貴公、良き目をしておるな。まっこと嘘を申しているようには見えぬな」


 どこか時代錯誤な口調ながらも、少女は秋人から顔を離した。

 互いに程よい距離となり、秋人はようやく落ち着いて彼女の全体像を把握することができた。


 まるでゲームやアニメに出てきても可笑しくないヒロインのように整った顔立ちと控えめながら彼女が異性を思わせる少し膨らみをもった胸元、そして膝より少し上の短めスカート、それと左腕には風紀委員と書かれた赤い腕章を付けており何故か左腰には長い刀をたずさえていたのだ。


(女剣士なのかな? いや、風紀委員って腕章をしているんだから……学園に通っている子には間違いない。模造刀だとは思うけれども、でもその刀危なくないのかな……。ま、まさかそれで校則違反する人を叩いたり?)


 秋人は彼女の容姿、それも主に持っている刀のことが気になり、気が気ではなかった。


「うん? 先程から何を見ておるのだ? ああ、この刀が気になるのだな? 貴公、意外と目利きなのだな」

「まぁそうですね。気にはなりますよね。ちなみにそれって危なくはないんですか?」

「ふふっ。私に対して臆することなく“危なくはないのか”、か」


 秋人は模造刀とはいえ、武器のような物を携帯することに対して聞いたのだったが、何が面白いのか秋人のその言葉を受けて少女は少しだけ口元を緩ませていた。


「これはな、代々我が家系へと受け継がれし名刀信長であ~るっ!」

「は、はぁ……名刀、信長……ですか? 信長ってあの有名な?」

「そうだっ! 日ノ本一、有名と言っても過言ではないあの織田信長公の刀である! また私はその末裔であり、名を織田雪那ゆきなと申す」


 歴史に疎い秋人と言えども、織田信長の名くらいは知っていた。


 織田信長は今から400年程前の戦国時代に、尾張を中心に美濃などを統治しながら楽市楽座など当時としては画期的な商業を確立した人物だった。

 また物の価値観を米中心から貨幣中心へと移り変わるだろうと誰よりも先に時代の流れを読み、鉄砲など新たな技術革新や南蛮の知識を貪欲且つ自分の利へと繋がるようにして戦国時代の名立たる武将を抑え、その名を全国に知らしめた。


 どうやら目の前の少女こそ、その織田信長の末裔ということらしい。

 秋人は一瞬だけ中二病でも拗らせたのかと訝しげな思いを巡らせるが、どうにも嘘をついているようには見えなかった。


「して、貴公の名は?」

「あっ、はい。ボクは白鷺秋人って言います。秋の人と書いて秋人」

「ふむ。名が秋人とな……これはまた面妖であるな」

「……えっ? め、めんよう……ですか?」

(面妖ってどんな意味だっけ? 不思議とか可笑しいって意味だったような……。ボクの名前ってそんなに可笑しいのかなぁ?)


 秋人の顔色を見て取った雪那と名乗る少女は慌てながらに訂正する。


「いや、これは失敬。親から授かりし名を面妖とは失礼がすぎたな。すまない」

「ああ、いえいえ。大丈夫ですから」 


 さすがに頭を下げられ謝罪までされてしまうと、秋人でさえ怒るに怒れない。


「そ、そうか? 貴公は器が大きいのだな! はっはっはっ」

「は、はぁ」


 何を褒められ笑われているのか秋人には理解できずにいたが、それでも雪那が悪い人だとは思えなかった。

 自分に非があることを認め、相手に頭を下げて謝罪することはなかなかできることではない。


「それで秋人とやら。いかような用件で我が学園へと参ったのじゃ?」

「えっと……ボクは……」

「そこの貴方、どきなさいっ!!」

「むっ!」


 背後から女性の大声で退けと言われたが、秋人はすぐさま反応できずにいた。

 だが代わりと言わんばかりに目の前に居た雪那が瞬時に反応を示す。


 ガッ……キン。

 何か重い金属同士がぶつかる大きな音がすると同時に、やや遅れて軽く鈍い音が傍に居る秋人の耳へと響き伝わる。


「なっ……なっ……なななーーーっ!?」

「ふん。完全に不意を突いたつもりでしたが、雪那はこれを受け止めましたか……やりますね」

「貴女が律儀にも秋人へ、先に声をかけたからですよ。そうでなければ、いつもと同じく受け止めずに流し避けていました」


 目の前で起こった光景を目の当たりにした秋人は驚きから地面へと腰を着きながら、思わず逃げ帰るよう仰け反ってしまう。

 それもそのはず、雪那ともう一人の女性とが刀片手に鍔迫り合いをしていたのだ。


「やはり貴女は危険な存在ですね。こうして対峙しながら討ち合いをしているだけでも“それ”が伝わってきます」

「貴女のほうこそ、やはり背後からの不意打ちがお手の物のようですね。これも血筋が成せることのようですね」

「くくくっ」

「はっはっはっ」


 互いに笑みを浮かべながらも、ジリジリと足を前へ後ろへと鬩ぎ合いながら攻防を続けている。

 そんな二人が美しいと思いながらも、狂喜であると秋人は思わずに入られなかった。


 何故なら今二人が手にしている刀は刃を潰した模造刀でもなければ木を削り作った木刀の類でもなく、相手を殺せるほどの鋭い刃を持ち合わせている真剣だった。

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