……って、聖修さんって、俺のことを見ててくれてたってことなのか!?
そうか……そうか……。
と、一人で納得している俺。
だって、俺がずっと憧れていたアイドルが、俺のことをちゃんと見ていてくれてたなんて、正直めちゃくちゃ嬉しくないか?
俺にとってアイドルなんて、神様みたいな存在で、本来なら普通に会話すらできない人だと思ってたのに、今こうして憧れの聖修と会話しているし、しかも家にまで来てくれている。
ただでさえ頭がいっぱいいっぱいだった俺にとって、さらにライブで聖修が俺のことを気にしてくれていたなんて、本当に夢みたいな出来事だ。
夢か現実か、自分でも混乱してくるくらいだ。
「なんか、私のためにライブに来てくれて……毎回、毎回応援してくれていて……そんな前向きな神楽さんのことを、私は舞台の上から見ていて。
逆に、一般人と付き合ったらどうなんだろう? って思ったりして……」
そう言って、聖修さんは真剣な瞳で俺の顔を見つめ、そして笑顔で手をギュッと握ってきた。
その行動に、思わず息を飲む俺。
息を飲むなんて、生きている間にそう何度もあることじゃない。でも、これは確実にその数少ない「一回」になる。
「ねぇ、神楽さん。私と付き合ってみない?」
……は、はーーい!?
な、なんで!? なんで俺、聖修に告白されてるの!?
確かに聖修のことは好きだけど……そりゃ、正直言ってオカズにもしてましたけど……。
って、あの有名な聖修さんから告白!? あぁ、もう、頭の中が真っ白になりそうなんですけどー……。
っていうか、どうしたらいいの!? 俺、今まで誰とも付き合ったことないんですけど!?
ど、ど、どうしたら!? あ、いや……どうしたらいいんですかー!?
俺の頭の中は、完全にパニック状態だった。
今は何も考えられない。これって本当に現実? 夢じゃない?
……あ、いや、これは現実……なんだよね?
さっきから、俺は自問自答の繰り返し。
でも! 俺みたいな平凡な一般人が、有名人に告白されたら……そりゃ、パニックにもなるってもんだろ!?
しかも、自分も男で、相手も立派な男だぞ!?
「神楽さん? 大丈夫ですか?」
「あ、え? あ、はい……だ、大丈夫ですけど……」
たぶん今の俺は、聖修に告白されて、半分くらい魂が抜けてる状態なんだろう。
現実に戻るまで、ちょっと時間がかかってしまったくらいだから。
そして、落ち着くために深呼吸をする。
……とりあえず、冷静になれ、俺。
何度か深呼吸を繰り返すと、ようやく心臓のバクバクも少しずつ収まってきた気がする。
「ちょ、ちょっと……待ってくださいよ……。
聖修さん、それ……本気で言ってるんですよね? 告白……なんですよね?」