心臓の音はなんとか落ち着かせることができたけれど、まだ本当にこれが現実なのか、それとも夢なのか、聖修さんが冗談で俺に告白してきているのか……。違う意味でのパニック状態は続いていた。とりあえず、自分を落ち着かせるためにも、今起きている現実を整理してみることにした。
「ん? 告白? ……そうだけど……私は君にちゃんと告白してるんだけど?」
……うー、マジかー! って、本当に現実!? それとも夢!? いやいや、むしろ、有名人が引っかかるドッキリ番組のカメラがどこかに仕掛けてあるんじゃないかと疑いたくなるほどだ。
周囲を見回してみても、カメラらしきものは見当たらない。
そこに、なぜか少しホッとしてしまう俺。
……って、ドッキリなら、俺じゃなくて有名人である聖修さんの方がターゲットになるはずだよな。あ、でも最近は一般人に仕掛けるドッキリ番組もあったような……まあ、その時間は家にいないから見てないけど。それにしても、男である聖修さんが、男である俺に告白するって……流石にテレビのドッキリ企画でも、そんなテーマは扱わないだろうし。
そう自分に言い聞かせ、納得してしまう俺。
いやいや、そうだろう? うん、そうそう。ドッキリ番組ってのは、芸能人に仕掛けて視聴者を楽しませるものだし、一般人の俺に仕掛けても面白くないだろう。そこは芸能人じゃないと映えない部分ってあるしなー。
……って、ちょっと待てよ。よく考えたら、昨日から今日にかけて、偶然が重なりすぎてないか!? 昨日、酔っぱらって帰ってきたときに、引っ越し中の聖修さんに初めて会って、今日はあのおばさんたちが偶然外で話していて、それがきっかけで聖修さんを家に入れることになって……で、告白されて……。
うー! なんだか全部が偶然にしては出来すぎているような……。
しかも、出会ってまだ二日目で告白って……いや、まあ、俺は聖修のライブに何度も行ってたから、顔を覚えられてたのは理解できるけど。実際に会話をしたのはお隣さんになってからが初めてで……それなのに、こんなにも早く告白されるなんて……。
……まあ、聖修さんも「君のことは前から気になっていた」って言ってたし、それが本当なら初対面ってわけでもないのか……。
完全にパニック状態で頭を抱える俺。
……んー、本当に聖修が俺に告白してきてるって、マジ? 嘘?
どっちなんだよ!? あー、まだ全然現実味がない!
「もしかして、まだ現実として受け入れられてない?」
「……へっ!?」
聖修さんのその言葉に、思わず裏声を上げてしまう。……いや、ほんと、聖修に会ってから何回裏声出してるんだ俺。
「いやー、なんていうのかな? ずっと神楽さん、頭抱えたままだったしさ……」
「あ、いや……」
本当に、またパニック状態になってきてる俺。
……あぁ、もう……なんだか無理……聖修さんの顔、直視できなくなってきた。
「じゃあさ……私がいくつか質問するから、神楽さんはそれに答えてくれる?」
「……え? あ、いいですよ……」
その言葉に、ようやく俺は聖修さんの顔を正面から見ることができた。
「会っていきなり、君に告白なんてしてゴメンね……。ただ、私の気持ちが抑えられなかったっていうのかな。ま、とりあえず、質問していくよ……」