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第36話

 聖修は最後に俺の舌を吸い上げて唇から離れていく。


 もうその頃には俺は肩で呼吸を繰り返し、後もう少しで意識が飛びそうな位になっていた。


「今の尚……本当に色っぽい顔してる……」


 ……えー! えー!? マジで!? え? でも、色っぽい顔ってどんな顔だろ? 自分でも見たことがないから分からないや……。それなら、その表情だって恋人である聖修だけのものだろ!? って、心の中だけで聖修のことを独占している気分にもなる。


「それだけで、そんなに色っぽい表情をしてたら、これから、尚はどうなっちゃうのかな?」

「……へ? え?」


 確かにそう言われてみればそうだ。舌を入れた深いキスだけで、もう色っぽい顔をしていたら、このままではこれから先、自分がどうなってしまうのかさえ想像が出来ない。ま、こういうことをしてるのだから、そこまで考えてる必要はないのかな。後はもう快感に溺れているだけでいいのだから。


「……って、いいじゃん。もう、ここから先にだって、快感しかないんだからさ」

「……ぷっ!」


 と噴き出す聖修。


「ま、確かにそうだよね……もう、快感しかないんだしね……」


 何が面白かったのであろうか。今の俺そんな面白いこと言ってたかな? と自問自答したくなる。


「じゃ、服脱がしてっていい?」


 ……って、それを言葉にしなくてもいいじゃん! より恥ずかしさが増すでしょうが! あ、でも、黙って脱がされるのも……んー、そこは、どうでもいいのかな? 結局脱がされてしまうのだから。


「……え? ……あ、いや……」


 どう答えていいか分からない。だから言葉を濁らせてしまっていた。


「こういうことって、恥ずかしさも必要だよね?」

「……え?」


 ……俺はどういうこと!? という表情で聖修の顔を見上げる。


「クス……やっと、尚顔を上げてくれた……。それはいいとして、どういうことかって表情してるよね? だってさ、恥ずかしくないとこういうことしてるのって意味なさそうじゃない? だって、責めている私だって、何かしらのアクションがないと、ヤってる感じがしないし。恥ずかしがってくれるから楽しいっていうのかな? 黙ってヤるだけっていうのは楽しくないんじゃないのかな? じゃあ、もし、尚が責めていて、何も反応がなかったら、どう思う?」

「あ……」


 ……確かにそう言われてみればそうだ。無表情でやられても面白くもなんともない。だから色々な表情を見せ合った方が楽しかったり気持ちよくなったりすることが出来る訳だ。


「確かにそうだよね……」

「なら、こいうことしてるんだから、思いっきり恥ずかしがってもいいんじゃないのかな?」

「……ぅん」


 ……って、素直に返事してもおかしいと思った俺は小さな声でとりあえず納得しておく。 

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