しかし、こういう事に関して全くもって知識がないというには本当に恐怖でしかない。俺が知識がなかったら、きっと、これからこういう行為というのは痛い思いしかしなかったのだから聖修とは出来なかっただろう。
「ふーん……この液体を使うんだね……」
ベッドの上に戻ってきた聖修。そのローションが入っている瓶を掲げて、どうやら中身を見ているようだ。ローションとは透明でまるで水のりみたいな感じなのだけど、それは水のりのように固まる事はない。触り心地もぬるぬるしているから、そこは水のりの触り心地に似ているのかもしれない。冷たい所も一緒だろう。ただ違うのは固まるか? 固まらないか? だろう。
そして聖修は俺の足と足の間に体を置いて手にローションを垂らすと、
「冷たくてぬるぬるってしてるんだね……これで中の滑りを良くするんだ……」
俺の足と足の間に体を置いてるだけの聖修。そこで聖修は何かに気付いたのか、
「ねぇ、この体勢じゃ、中に指を入れることも出来ないし、私のモノを挿れることも出来なさそうなんだけど……?」
……確かにそうなのかもしれないのだけど流石にそれ以上は俺の口からは恥ずかしくて言えない。言える筈もない。
少し俺が黙っていると、
「尚でも知らないこと?」
と心配そうにこう切なそうに聞いてくる聖修。
「あ、いや……」
俺はまた聖修から視線を反らしてしまっていた。そうだ。俺にはその事に関して知識があるのだから知らない事はない。だけど、その事を聖修に伝えるのが恥ずかしいだけだ。
「……って、ことは知ってるってことだよね?」
「あ、まぁ……」
「じゃあ、どうしたらいいの?」
本気で知らないのか? 知ってて聞いてきているのか? 本当に聖修っていう人物は分からない。
しかも心理学とか俳優とかやってるのだから聖修からしてみたら、知らなくても知ってるとか知ってても知らないフリとかって出来るって訳だ。
でもこのままでは先に進む事が出来ない。なら恥を忍んで俺から言うしかないだろう。
もしかしたら知ってて、そういう風に言ってるなら完全に聖修は俺の羞恥心を煽ってきているという事なのだから。
「あ、だからさ……」
ここで嘘を教えた所で痛いとかそういう思いをするのは俺だ。なら嘘ではなく本当のことを教えて上げた方がいいって事だ。
俺は一息吐くと、
「だから、そこは俺の足を持ち上げるか、俺を四つん這いにさせるか、どちらかなんだけど……」