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第19話「ギャル後輩のキュンとドキドキ大作戦」

体育祭の準備は佳境に入っていて、校庭は色とりどりのテントや旗で賑やかだ。茉莉奈は慧のことが気になって仕方なくて、朝からなんだか落ち着かない。


「ねえ、先輩」


声をかけてきたのは、体育祭委員の後輩・柏木彩乃。彼女はギャルらしい明るい笑顔を浮かべて、今日も元気いっぱいだ。


「何?」茉莉奈はちょっと困った顔をしながらも返す。


「もー、先輩ったら、先輩のこと大好きな男子がいるのに、全然気づいてないっぽくてさー」


「え?誰のこと?」


「えー、バレバレじゃん!藤井先輩だよ、藤井先輩!」


彩乃は得意げに言った。茉莉奈は顔が赤くなってしまう。


「ちょ、ちょっと!それは違うよ!」


「まぁまぁ、落ち着いて。ていうかさ、あんた本当に鈍感すぎ!その無口でクールな先輩が、あんたのことで照れてるんだってば」


「そ、そんなことないもん!」


「うっそー。あたし、先輩たちのツンデレコンビ、見ててキュンキュンするんだけど」


「ツンデレなんて言わないでよ……」


ふたりの会話に、慧が体育祭の設営を終えて戻ってきた。


「お疲れ様」


茉莉奈が声をかけると、慧は少し照れたように目をそらしながら、


「お疲れ」


と言った。


彩乃はその様子を見逃さない。


「ねえ先輩、あんたがもっと素直になれば、先輩だってもっと話しかけやすくなると思うよ?」


「そ、そんなの難しいよ……」


「だったらあたしが手伝ってあげる!」


そう言って、彩乃は腕を組み、どこか作戦を思いついたような笑みを浮かべた。


「これから先輩をサポートして、もっと先輩の良さを藤井先輩にアピールしちゃうから」


「え、彩乃……?」


「任せなさい!」


その日の放課後。茉莉奈は彩乃に言われるまま、体育館の裏でちょっとした練習をすることになった。


「まずは、藤井先輩に笑顔で話しかける練習!」


彩乃の指導はまるで体育会系の先輩のようで、茉莉奈は思わず笑ってしまう。


「笑顔が大事だよ!クールな先輩も、笑顔に弱いから」


「そ、そうなんだ……」


彩乃は、ふと真剣な表情になって、


「でもさ、先輩が無理しないで、自分らしくいることが一番だよ。だから変に頑張らなくていい」


茉莉奈はその言葉にじんわり心が温かくなった。


翌日、体育祭の準備が終わった放課後。茉莉奈は慧とふたりきりになった。


「ねえ、先輩」


「……何?」


「今日はありがとう。彩乃のおかげで、ちょっと勇気が出たよ」


慧は少し照れてから、


「そうか」


と言った。


「ねえ、私、先輩のこと、もっと知りたいな」


茉莉奈が素直に言うと、慧の表情が柔らかくなる。


「俺もだ」


その言葉に、茉莉奈の心臓はバクバクと跳ねた。


「先輩……」


「これからは、もっと一緒にいろんなことを経験しよう」


慧がゆっくりと言葉を続ける。


「茉莉奈のこと、俺だけの太陽にしたい」


突然の言葉に、茉莉奈は目を丸くした。


「そ、それって……?」


慧は少し照れて、でも真剣な眼差しで、


「俺の気持ちだ」


その瞬間、茉莉奈の胸に甘くて熱いものがじわじわと広がった。


「ありがとう、先輩」


「こちらこそ」


ふたりは手をつなぎ、校庭に降る夕陽の光に包まれた。


体育祭当日、茉莉奈と慧、そして彩乃も一緒に、全力で楽しんだ。


彩乃は明るく盛り上げ役として大活躍し、茉莉奈と慧の距離も一段と近づいた。


甘酸っぱい青春の一ページが、またひとつ刻まれたのだった。



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