それはこの妖鬼の力なのか、それともどこかに灯りがあったのか、辺りを見回す余裕がなかった。
眼を逸らせない。
「本当に君を知らないんだ····人違いだと思う」
「ずっと眠っていたから、思い出せないだけ。身体のどこかに花の模様の印があるでしょう? それがあれば間違いない。俺があなたを間違えるはずがない。匂いも一緒だし」
手を添えて身体を起こさせ、顔を近づけてくんくんと犬のように鼻を鳴らす。呆然とされるがままになっている
「え? ええっ! ちょっ······な、なにを?」
「俺が確かめてあげる」
脱がされた水浅葱色の薄い羽織がそのまま地面に広がり、白い上衣に両手が掛けられゆっくりと肩から肌を剝き出しにされる。
胸の辺りまで露わになったその時、
そこには透明で青白く光る、長細く鋭い飛針のようなものがあった。
「あっぶないなぁ。このひとを傷付けたらどうするつもり?」
「それはあり得ない」
「どうだか、」
上衣から手を放し、妖鬼は
そんなやり取りの中、
そこには何を想像していたのか青ざめた表情をしている
「今、このひとと大事な話をしてるところなんだから、部外者は引っ込んでてくれる? 俺もこう見えてヒマじゃないんでね、」
ぽいっと指の中の氷の飛針を投げ捨て、代わりに手をひらひらと振った。
「離れろ」
今まで聞いたことのないくらいより低く、目の前の者を牽制するような声。首を戻して、思わず妖鬼の方を
鬼は口角を上げて、挑発するかのように