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恋はハチャメチャまみれでままならない!
恋はハチャメチャまみれでままならない!
乾為天女
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年05月29日
公開日
4,152字
連載中
主人公・蒼馬が、次々と現れる個性的なヒロインたちに振り回されながらも、本音で向き合っていく物語。      

第1章:始業式のメイド転校生 (00)

 朝のチャイムが鳴りきる寸前、教室の空気はピンと張り詰めていた。

 春の陽差しが教室の窓ガラスを跳ね、白いシャツの肩口に小さな光の粒を踊らせている。蒼馬は、まだ使い慣れない高校の机に肘をついて、その光をぼんやり見つめていた。


「なあ、蒼馬。今度の転校生、知ってるか?」


 声をかけてきたのは、いつもテンション高めの友人・元気だ。名前に違わず、とにかく声がデカい。


「知らない。興味もない」


「あー出た。冷静キャラ。でもお前、前の中学でも転校生と仲良くしてたって噂だったぜ? また属性ハーレム狙ってる?」


「うるさい。狙ってない。そもそも、属性ってなんだよ」


 そこへ、教室のドアがゆっくりと開いた。


「お、お待たせいたしました……ご、ごきげんよう、皆様」


 静まり返った空間に、妙に浮世離れした挨拶が響いた。


 そこに立っていたのは、黒いロングヘアに白いレースのカチューシャをつけた少女だった。

 ――メイド服。

 それも、フリルとリボンがやたらめったら多いやつ。完全にコスプレ会場か、執事喫茶のそれだった。


「えっ、あの子……転校生?」「ってか制服じゃねーの!?」


 男子たちは目を見開き、女子たちは凍りついた。


「転校生の香(こう)さんです。ご家庭の事情で――」


 担任の先生が慌ててフォローに入る。


「じ、自立支援、ってやつね? で、でも普通の子ですからね? あ、席は……あー……蒼馬の隣で」


 一斉に教室の視線が蒼馬に突き刺さった。


「またかよお前!」


 元気が爆笑しながら肩を叩いてくる。蒼馬は深くため息をついた。


 香はゆっくりと歩いてくると、ぴたりと蒼馬の席の横でお辞儀した。


「これより、あなた様のご命令を最優先とさせていただきます。ご遠慮なく、お申しつけくださいませ――ご主人様」


「……俺、今日、欠席すればよかった」

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