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全員ヒロイン!? なのに俺は、ひとりを選ばなきゃいけない
全員ヒロイン!? なのに俺は、ひとりを選ばなきゃいけない
MKT
現実世界ラブコメ
2025年05月30日
公開日
1.7万字
完結済
名門・私立神代学園に転校してきた風間ユウト。 そこは、完璧すぎるメイド系転校生、甘えん坊な生徒会長、ヤンデレ後輩、清楚系文学少女 “属性MAXなヒロインたち”がなぜか全員、彼に好意を向けてくる夢のような学園だった。 けれど、それはただのハーレムラブコメじゃない。 それぞれが「本気の想い」を抱えていて、誰かが選ばれれば、誰かが傷つく。 やがて訪れる修学旅行、文化祭、そしてフィナーレのダンスホール ユウトは、逃げることも引き延ばすこともできず、恋に「答え」を出さなければならなくなる。 過去か、今か。 優しさか、ときめきか。 憧れか、寄り添ってくれた誰かか。 これは、たくさんの恋の中でたったひとつの恋を選ぶ、 ちょっと大人な“決断系”青春ラブコメディ。

第1話 『ヤンデレ後輩、襲来』

 春。

 桜吹雪の舞う坂道を、俺は新しい制服を着て歩いていた。


「ふぁ〜……。まさか全寮制とは思ってなかったな」


 いきなり両親の転勤。

 そして親戚のコネで滑り込んだのが、私立・神代学園(しんだいがくえん)だった。


 全寮制、制服が妙に豪華、そしてやたら施設がでかい。

 要するに「ザ・金持ち学校」。俺みたいな庶民が来るところじゃない。


 ……の、はずだった。


「ユウト先輩っ!」


 背後から、突風のように声が飛んできた。


「ん、えっ?」


 振り向いた瞬間、ふわっと香る甘いシャンプーの匂い。

 そして俺の胸に、勢いよく飛び込んできた女の子。


「先輩っ……やっと会えましたっ……!」

「こ、ことの……?」


 黒羽ことの(くろば・ことの)。

 中学の時の後輩。小柄で、華奢で、どこか儚げ……な見た目なのに、めちゃくちゃ懐いてくる。


 いや、懐いてくるというか


「えへへ……先輩の転校先、ずっと調べてたんです」

「なんでだよ怖ぇよ!!」


 満面の笑みで言うことじゃない!

 待って、今「調べてた」って言ったよな!? ストーキング的な意味で!?


「先輩のこと……中学の頃から、ずっと見てましたから」

「見てました、って、どのレベルで!?」


「寝顔……優しそうでした」

「見てんじゃねぇかあああ!」


 まるでホラー映画のような第一印象だが、ことのは本気で俺のことが好きらしい。

 しかも、この学園の高等部に進学してきてる。偶然か、必然か。いや、たぶん後者。


「寮も一緒ですね。これで夜もずっと一緒です♡」

「一緒じゃねぇよ! 男子寮と女子寮は分かれてるはずだろ!!」


「あ……でも非常階段って便利ですよね……ふふっ」

「笑うなああああ!!」


 初日から胃に穴が開きそうな俺の前に、もうひとつの影が立ちはだかった。


「……風間ユウトくん」


 静かな、けれど透き通る声。

 隣の席に座っていた、氷室しずくが、俺をじっと見つめていた。


「な、なんだ?」


「さっき、落ちてた桜の花びら、拾ってたでしょ。……それ、君らしいなって思った」


「えっ? いや、それはゴミ箱に入れようと……」


「ううん。きっと、大事にしたかったんだと思う」

しずくは微笑む。


 めっちゃ読まれてる!? 心読まれてる!?

 ていうか、なんでこいつ、隣の席で俺のことずっと観察してた!?


「……興味あるかも。君って、ちょっと変だから」

「いや、変なのはお前らだよ!!!」


 こうして俺の地獄の、もとい、花の高校生活が始まった。


 しかもこの後、生徒会長に気に入られ、なぜかメイドに仕えられることになるなんて、


 そのときの俺は、まだ何も知らなかった。

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