恒例と化した、バイトが終わってみやびを家まで送った後の部屋でのキス。
舌を入れるのも大分慣れてきた。
「ナギはえっちだな」
キスし終わったら大抵みやびにこう言われる。
「男はみんなえっちなんだ。もう一回いい?」と左手で彼女の顔を撫でる。
「しょうがないな」
ふふっと笑いながら、目を閉じこちらに顔を傾けてくれる。
舌を入れやすいようにやや口を開いてくれる。
受け入れてくれるのが嬉しくて、それ以上を求めてしまった。
駄目だと理性が警告しているのに、俺の手はみやびの胸に伸びていた。
右の掌をそのふくらみに当て、親指で軽くその豊かなラインをなぞるが、やはり服越しではなく直に触りたい。
「!?」
胸に触れた瞬間に驚いたみやびが口内の俺の舌を若干噛む。
痛いが、それ以上に興奮していたのでキスをやめない。
有無を言わさないようにキスを続行する。
噛んでしまった事に罪悪感を感じたのか、歯茎や歯列へと動く俺の舌にそれ以上抵抗しなかった。
「ん・・・っ」
みやびの舌が触れたので、優しく絡める。
軽く吸ったり、甘噛みしたり。
「んっ・・・ぁん・・・」
時折漏れる声が色っぽく、俺の劣情を掻き立てる。
そして右手で彼女のシャツと下着をめくりあげる。
引き締まった腹をじっくり撫でまわし、上の方に手を動かす。
思ったよりも質感のあるふくらみを掌で掬い上げる。
柔らかい・・・。
服越しで触った時とはまるで違う。
添い寝して抱き着かれた時も感じたが、下着の有無でこんなにも違うのか。
指が沈み込むこの感触は男の体には無いから不思議だ。
上下に軽く掌を動かしながら尚も感触を楽しむ。
そのままさらに上の方へと指を動かそうとしたら、みやびに両手で胸を押された。
「っ、やだ」
小声で、短いけれど明確な拒絶。
「っ!?」
今俺は何をしようとしていた?
彼女の意思も確認しないまま、彼女の身体に触れるだなんて。
いくら番い同士だとはいえ、してはいけないことを。
俺に目を合わせないまま、耳まで赤く染めてみやびは服を整える。
居ても立っても居られずに鞄を手に立ち上がる
「す、すまない。今日はもう帰る」
「え?あ、ま、待って。このまま帰られる方が困る」
慌てた様子で引き止められてしまった。
「でも」合わせる顔が無い。
「とりあえず座って。ね」
ベッドの横を軽く叩くが、彼女の隣に座る気にはなれなかったので、ベッド前の椅子に座る。
「すまない。謝って許されることではないが、・・・暴走してしまった」
対面状態になっても顔を合わせられない。
「ううん。ビックリしただけだから」
みやびは俺の両手を取り、緩やかに首を振る。
「こっちも舌を噛んでゴメン、痛かったよね?」
全面的に俺が悪かったのに、みやびは謝ってくる。
「えっとね・・・今は時期が悪いっていうか。・・・もうちょっと待っててほしい」
そうか。
まだ、か。
最近はキスも当たり前のように受け入れてくれたから今回調子に乗ってしまった。
傷つけたくない、大事にしたいと本心から思っているのに。
ダメだな、俺は。
彼女の事になると制御が効かなくなる。
これからはさらに自制しないと、と心に誓ったのだが、まさか数日後にあんな予期せぬ事態が待ち受けてるとは思わなかった。